【運輸・物流】
(132 カンボジアの運輸・物流②の続き)
カンボジアのもう一つの大きな特徴としてドライポート※6 が挙げられる。
「基本的にドライポートには、広大な土地、倉庫、税関機能があります。他の国であれば、どの土地にも倉庫を建てられますし、そこからの輸出が可能です。カンボジアでは輸出をするためには二つの手段しかありません。一つ目は関税手続きを工場で行うこと、もうひとつはドライポートで行うことで、輸出に関する一連の業務が可能な場所というような意味しかないんです。ユニークなのは、5、6社のドライポート管理会社にその独占権があり、競合を育てるという面ではよくない点ですね」と、トーマスインターナショナルのトーマス氏は語る。工場側でドライポートを経由せずに直接輸出手配できるような環境になる日も待たれる。
物流会社を選ぶ時はその会社の実績と構成やカンボジアでの評判を調べるだけではなく、課税制度にどこまでコンプライアンスを守っているかも調査すべきである。これは物流会社に限った話ではないが、順守していない会社を選ぶと後々に問題となる場合もあり、注意が必要である。
2008年創業、主に米国発着の衣類や靴の輸出入を手掛けるトライアンフ・リンク・ロジスティクスのコウ・ペン氏は、「現在カンボジアは変化の真っただ中です。税金の支払いに関するコンプライアンスは、我社にとっても問題になってきています。競合する市場で、コンプライアンスを順守して、より高いコストを負う当社のような会社がある一方で、税金の支払いのコンプライアンスを順守しない一部の会社は、安価な価格設定を提示することができている。様々な課題がありますが、今後改善されることで市場の活性化につながるのではないかと思います」と語る。
個人商店や小規模企業等、まとまった物量を必要としない所は、輸入量も少ないが故に輸入業者がハンドキャリーやバス輸送等で持ち込み、関税を支払わずに輸入を行うケースも存在する。
カンボジアに限らず、発展途上国には汚職問題も蔓延る。オランダに本社があり世界各国に300支店を有するダムコ・カンボジアのクルーチ・ソピアックトラ氏は、「我々は、汚職撲滅ユニット(ACU)に署名しており不正なお金を払いません。不正を無くすには、不正に応じないことが一番ですから。今後も政府の強力なサポートが必要です」と語る。
さらに「以前は情勢の不安定や警察の不正で、物が国境を超えるのも難しかった時代がありましたが、今はGPS等で荷物の安全も高まり、物流を取り巻く環境は前よりずっと良くなった。政府にも意見書を提出していますが、今後はインフラや関税の不正等の改善ですね。日本人は成熟しており、1人1人が安定し責任感があります。カンボジアはまだ始まったばかりの国ですね」と付け加えた。
物流業者でACUに賛同署名している企業は稀であるが、責任感が強いカンボジア人が少しでも多くなるよう、まずは政府役人の意識改革も必須だ。また、支払う側も不正に応じず、断固たる態度を取ることも肝要である。
※6 ドライポート: 貨物の集配、通関業務、保管等を行う施設。税関機能も有している。プノンペン港はメコン河沿いの河川港で市街地に有るため、工場周辺に多数作られている。
(134 カンボジアの運輸・物流④へ続く)