【運輸・物流】
(131 カンボジアの運輸・物流①の続き)
カンボジア独自の制度として、輸出入手続きに関税とは別にカムコントロール※2 に貨物検査料を支払い、手続きをする必要がある。物流業界で30年の経験を持つトーマスインターナショナル・サービスのゼネラル・マネージャー、クリストファー・トーマス氏は、「関税は財務省が管理している一方で、カムコントロールは商業省が管理しています。このような二重の管理があらゆるものに適応されている事でコストもかさみます」と語る。
一方、世界37カ国に拠点を持ち、カンボジアには2007年に進出した韓国系物流会社、パントス・ロジスティクスのキム・ソンモ氏は、「税関内部の仕組みや法自体が明確ではないため、明確な判断を出してくれないケースが非常に多いので、その都度税関に問い合わせをしなければならない状況です。したがって、税関法等に対する十分な知識があり、不明確な部分に対しては税関と話し合うことができ、何かしらの解答を出せる能力が必要となります。この一連のプロセスをきちんと理解、実行できれば余分なコストはかかりません」と語る。
この問題は日・カンボジア官民合同会議※3 でも去年より継続的に取り上げられている。商業省担当官の公式説明では、輸出は繊維製品、輸入は特定品目のみがカムコントロールの貨物検査の対象となり、ASYCUDAシステム※4 によってハイリスクと評価された物についてのみ検査を行うとのこと。しかし、実際には輸出入される全貨物に対し検査料がかかっているのが現状である。この背景には、管轄省庁が異なる事による利権問題も絡み、簡単には改善されそうもない問題であるが、2015年7月、2016年3月にも開催された官民合同会議でも特に進展は見られず、迅速なカンボジア政府の対応が待たれる。
税関ではASYCUDAシステムを導入し、EDI化(電子データ交換)しているため、輸出入者はそのシステムを利用し輸出入申告を行う必要がある。しかし、データ入力できる端末に台数の限りがあり、しかもデータが手入力作業となるため、商品項目が増えると入力手続きだけでも莫大な時間を要するという問題点を抱えている。そこで、2014年6月にカンボジア版AEO※5 とも言われる Best Traders Initiative (BTI)が関税消費税総局により発足し、第1回認定者8社(そのうち日系企業は3社)に対する贈呈式が行われた。これにより、自社内に設置された専用端末での操作が可能になる。これは過去に官民合同会議等の際、数次に渡り当制度の導入についての議題が取り上げられており、この会議による優良成果事例と言えよう。しかし、具体的な手続きや承認条件等に不明瞭な点も多く、明確な情報開示が待たれる。
運送だけではなく、ドライポート内に検品所を持つ大森回漕店の山崎豊氏は、「もともとは運送屋ですが、工場の建設や生産ラインの
調整、原材料の輸入、製品の輸出、なども一貫してやって欲しいという依頼が来るんです。その流れから検査の業務が始まりました」と述べる。検査内容としては、外見検査やX線検査、検針器を使用してミシン針などの混入がないかどうかも確認し、発注主と工場側との製品基準のギャップを埋める非常に重要な作業も担う。同氏は「本業である運輸をより注力していきながら、サービスの一環として検品センターを活用し、何から何まで一貫してワンストップ化を続けていきたい」と語る。物流コストと労働コストと並び、製品品質も非常に重要なポイントとなる。新たに進出される企業もどれか一方の条件でカンボジアを見るのではなく、各分野において、進出に値する条件が整っているかをバランスよく見ることが求められる。
(133 カンボジアの運輸・物流③へ続く)