カンボジアに進出する日系企業のための
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2016年6月13日
カンボジア進出ガイド

【運輸・物流】

131 カンボジアの運輸・物流①(2016年5月発刊 ISSUE04より)

陸海空 Transport by land, sea and air

130 カンボジアのマーケティング・メディア④から続き
 内陸国であるカンボジアは、陸路、海路、空路、水路それぞれの運搬手配が可能となり、状況に応じた使い分けができる。海路であれば、シハヌークビル港経由が主要ルートとして挙げられる。国内唯一の深海港で、日本の支援により整備された、カンボジア全体の物量の60%を扱う重要港だ。また、河川港であるプノンペン港は、寄港可能な船舶サイズに制限はあるものの、メコン河を経由してベトナムのホーチミン港やカイメップ・チーバイ港への内陸水運航路として重要性が増しており、貨物船交通量の急増に伴い、プノンペン港湾公社の貨物港拡張計画の前倒しが2016年3月に発表された。

 空路での主要港はプノンペン国際空港とシェムリアップ国際空港の2空港である。いずれの空港からも日本への直行便は未就航で、日本へはタイ、シンガポール、ベトナム、マレーシア、香港などでの乗り継ぎ便での手配となる。現状、フレイター(貨物専用輸送機)の定期就航も無いため、航空各社が各々のフライトで利用する機体によって、一般貨物の積載可能サイズも異なる。本年度のANA日本直行便就航開始により、日本向けの航空貨物便の利便性が増すことにも期待したい。

 陸路では、タイ側からであれば、ポイペトかコッコン経由、ベトナム側からはバベット経由が現状での主要ルートとなるが、国道1号線のネアックルン橋の開通でプノンペンとホーチミンを結ぶ物量が増えると予想される。また、日本政府が南部経済回廊整備を支援しており、無償支給のネアックルン橋を始め、2020年までには国道5号線を改修し、全4車線化となる予定。

 他に、プノンペン・ポイペト(タイ国境)を結ぶ北線、プノンペン・シハヌークビルを結ぶ南線を有する鉄道路線も存在する。南線に関しては14年ぶりに旅客鉄道を運行再開するとの運営会社の発表があったが、運行速度や関連施設の充実度の関係で、一般貨物の輸送手段としての選択肢には入らないのが現状である。

 日本政府はカンボジアの国土開発・隣国とのコネクティビティの一層の支援を強化するため、高速道路網の整備等の案件化や物流の活性化を通じた投資促進を支援することを表明しているが、道路、港湾、空港、鉄道、それぞれの経路も含め、未だ発展途上であるため、利用環境に対するさらなる改善が待たれる。また、プノンペン市内の交通渋滞緩和と交通安全向上を図る目的として、日本政府による無償援助協力(ODA)により、既存の中国製信号機の入替えと交通管制センターを新たに設置する事も発表された。

インフラの開発 Development of infrastructure



 1992年に最初の会社を設立し、物流業をメインとしながらも不動産、貿易、メディア等、32の関連会社を持つワールドブリッジ・グループのシーア・リッティ閣下は、「カンボジアの物流は、これからの投資が必要な業界です。最も大切なのはインフラの開発で、これには政府のサポートも重要になってきます。例えばインフラ開発を進める私企業に、政府が優位なスキームを提案し、企業は自社の物流コストを安くするためにインフラに投資をします」と述べる。ここでもカンボジア政府の取り組みが重要視される。また、同氏は、「これからは隣国と競争する必要が出てきますが、私企業は未だ準備が整っていません」と付け加えた。ワールドブリッジはここ数年で1億2900万ドル投資しているが、さらにプノンペン南方に独自の経済特区設立のため1億ドルを投資する予定だ。

特恵関税制度 Generalized System of Preferences

 カンボジアは後発開発途上国として輸出に対する特恵を与えられている。GSP(特恵関税制度)※1 もその一つで、日本で製品を輸入する際に特恵関税率を使用し、多くの商品を免税で輸入できる事がカンボジアの注目されている理由の一つだ。関税、人件費などを含め、近隣諸国と比較してコストメリットが出るという考えの下で各社が進出している。

※1 一般特恵関税制度(GSP: Generalized System of Preferences): 開発途上国・地域を原産地とする一定の農水産品、鉱工業産品に対し、一般の関税率よりも低い税率(特恵税率)または無税により、開発途上国・地域の輸出所得の増大、工業化の促進と経済発展を支援するという先進国の国際的途上国支援制度。

132 カンボジアの運輸・物流②へ続く


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