【マーケティング・メディア】
(088 カンボジアのマーケティング・メディア②から続き)
カンボジア人を対象にしたクメール語のものや、英語、中国語、韓国語など各国外国人向けに発行しているものとがあり、それぞれのマーケットに告知するのに効果的である。スタンディングオンザブリッジの清野氏は、「カンボジア人向けの場合、文字はあまり読まれないよううです。必要最低限の情報のみ文字にして、ビジュアルインパクトを狙ったほうが反響につながるようです」と語った。
日本語では本誌をはじめ、生活情報誌のプノン、ニョニュム、クロマーマガジン、ディスカバーニューアジア、プノンペンプレスネオの6誌がある。在住日本人は2,000人ほどとマーケットとしては成長段階にあるので、日本人に特化したサービスでない限り他のマーケティング手法との併用が望ましい。
メディアやマーケティングにとって印刷という作業工程は切り離せない。しかし、国内に600を超える印刷会社があるものの、印刷技術は発展途上にあり、印刷の主流はダイレクト刷版ではなく、フィルムを使用している。また、紙やインク、電気まで隣国から輸入していることから、タイやベトナムと同等か若干高く、クオリティは劣っている。
仕上がり時に、色ムラやズレなどの混入や、それを理由に刷り直しを要求しても通らないことが多い。また、天候や機械の故障、その他の理由で大幅に納期が遅れることもあるが、ペナルティを課すことは望めない。
以下は、多くの印刷会社と取引のあるスタンディングオンザブリッジの清野氏に訊いた賢い印刷会社との付き合い方。
◇見積りと一緒に過去の実績をみる。 ◇見積り依頼時に、できる限り具体的に要望を伝える。サンプルがあれば必ず渡すこと。◇高くてもクオリティの高い会社と安かろう悪かろうの会社を使いわける。 ◇あまり重要でない印刷物の時に、新しい印刷会社を試してみる。 ◇クオリティ重視の場合必要部数に2割増しでオーダーする(部数が増えても極端に金額は上がらないため)。 ◇1社とは長く付き合う。それによって価格、納期、支払、など融通を利かせてくれることが多くなる。 ◇広告代理店を使うのも手。要望に応じたクオリティ管理をしてくれ、面倒な印刷会社とのやりとりも必要ない。
工場の開所式や、新商品の発売や記念パーティーなど、イベントもカンボジアでの事業で欠かすことはできない。カンボジアでのイベントについて、業界で30年以上の歴史を持つキーラットイベントのアット・チャトラー氏は、「基本的には他国と同様の手法を踏襲します。違っているのはカンボジアでは広報活動の考え方が浸透していないことだけです。例えば車を販売したい場合、どうすればお客様に興味を持ってもらえるように展示できるか、強く印象付けるにはどうすればいいかについて理解していません」と述べている。 当地でのイベントの準備については、「依頼するときにはまず予算を決め、規模にもよりますが準備期間として1か月、大きなものでは半年の時間をかけることもあります。ショールームのオープンでしたら1か月、本社が日本にある場合などは、手直しのプロセスに時間がかかることもあるので3か月あれば十分です」とアドバイスしている。
総体的に、どんなメディアを使うか、どんなイベントをやるか以前に、本当に自社のサービス、プロモーションがカンボジア人にヒットするものであるかというところが一番大事である。カンボジアに無いものだから、とか、日本で流行っているからという理由だけでサービスを始めてしまうと、宣伝費だけが嵩んで苦しい経営になるだろう。カンボジア人の行動様式も多様化してきているので、自社のターゲットが利用しているサービスを研究しながらローカライズしていくことが大事だ。
また、最後に、メディア事業そのもので進出を考えている日系企業に向けて、トメイトメイ・ドットコムのキー氏は、「ゼロからメディアを作っていくのは、コスト面やスタッフ面などで相当大変な道だと思います。現地企業とパートナーシップを組んでいくことが近道だと思います」とアドバイスした。
(090 カンボジアの運輸・物流①へ続く)