【マーケティング・メディア】
(087 カンボジアのマーケティング・メディア①から続き)
あらゆる層にリーチできる一般的なメディアである。携帯電話から聴くこともでき、テレビよりも細分化したエリアへの告知が可能。プノンペンには36のラジオ局があり、地方と合わせると200局以上が存在する。そのため、ラジオのマーケットとしては大きいが、広告主が分散するため、広告費が非常に安いのが特徴。しかも国内のほとんどを網羅し、特にネットやテレビではカバーできない農村部まで浸透させることができる。ラジオの内容は、70%~80%が若者向けのエンターテイメント性の高い番組を放送している。「かつては歴史を伝えるなどの文化的なコンセプトで番組作りをする局が複数ありましたが、若者に不人気で、広告も集まらず、やむを得ずコンセプトを変えていきました」と、DAPのソイ・ソピーア氏は語る。また、ラジオ広告の利用方法について、「これはカンボジアの教育水準にも関係することですが、文字から情報を得ることに慣れていない人たち、農場や工場のワーカーを募集などといった告知にはいいですね。逆に知識人が視聴するとすれば、海外ラジオ番組やTV番組です」とトメイトメイ・ドットコムのキー氏は述べている。
男性向け商品、サービス告知に適したメディア。レスマイ・カンプチアがカンボジア最大の新聞社といわれるが、プノンペン市内販売店に聞き込み調査をしたところ、一番売れているのがカッサンテピアップであった(弊社調べ)。事故などの三面記事を多く載せていることが特徴の新聞である。このことは、ウェブの項で触れたように、カンボジアでのマーケティングの特徴の一つである。また、求人広告の掲載も多いため、求職者が多く購読する傾向がある。逆にプノンペンポストやカンボジア・デイリーなどの英字新聞はインターナショナルニュースをメインに扱っており、在住外国人や現地知識人をターゲットとしている。
カンボジアで英語・クメール語併記の初の日刊紙を発行したカンボジア・デイリーのデボラ・クリッシャー・スティール氏は、「カンボジア・デイリーの読者は、教育を受けたカンボジア人と在住外国人が中心。クメール語版も発行し、地方へも配布していますが、読んでいる人がいるかというと、数は限られてくると思います。街は発展していきますが、地方は変わっておらず、字が読める人と、そうでない人とのギャップは大きいのです」と述べた。また新聞以外の媒体の可能性についても、「スマートフォンがかなり普及しているので、それに合わせた携帯用アプリが増えているのが、今のトレンドではないでしょうか。ニュースだけではなく、エンターテインメント、チャット、ソーシャルメディアを通して、これからもっと情報が出たり入ったりするのではないでしょうか。デジタルメディアでもカンボジア・デイリーは読めるようにしていますので、世界中にニュースを発信できます。オンラインのヒット数の50%は国外からのアクセスになります」と付け加えた。
現代のカンボジアは、流行のもの、良いものは積極的に宣伝する傾向があり、バズマーケティング、口コミが有効となる。なので、影響力のある人からの発信は大きな価値を生む。カンボジア人向けフリーペーパー「チュガポン(CHUGA-PON)」を発行するメイツの柳内学氏は、「例えば、村で探したワーカーをコアメンバーとして好待遇で働いてもらって仲間を連れてきてもらう方法もあります。クラブも人気がありますから、DJなどに流行らせたいアイテムを無料で持たせて、周囲に欲しいという気分にさせることもできます。これはカンボジア人の特性が分かっていないとできない手法です」と語っている。
そして、カンボジアならではのアナログ媒体といえばトゥクトゥク広告だろう。交通広告としてカンボジアならではの影響力を持っている。業種業態、ターゲットを問わず利用されている。メイツの柳内氏は、「業種にかかわらず、50台を半年以上走らせるのが効果的です。ドライバーと直接交渉すれば7、8ドル程度で設置可能ですが、しっかり管理しないと他の広告に付け替えられたりといったトラブルも多く、弊社のような代理店に委託することがいいと思います。価格は15ドルとなりますが、月次報告や各種アレンジもしっかり対応させていただいております」と続けた。 また、カンボジア人に響く効果的なデザインについて、「抽象的なデザインはまだ受け入れられないでしょう。日本のようにストーリー性を重視したものではなく、ダイレクトに商品を見せる具体的なものが受け入れられると思います」とアドバイスした。
また、フラッシュモブやゲリラ告知は、プノンペンの若者向けのサービスを中心にここ数年増えてきた。先進的な手法を主に使うブラウンコーヒーや、カンボジア人に大人気のピザカンパニーなどが先駆けとなり、新しい手法を生み出しているようだ。
(089 カンボジアのマーケティング・メディア③へ続く)