カンボジアに進出する日系企業のための
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2015年11月9日
カンボジア進出ガイド

【マーケティング・メディア】

087 カンボジアのマーケティング・メディア①(2015年10月発刊 ISSUE03より)

マーケット調査 Market Research

086 カンボジアの教育・学習支援から続き
 これから投入しようとするサービスや商品に需要があるか、タイミングは最適か、パートナーは見つかるのかなど、マーケット調査のポイントはいくつか挙げられる。

 マーケット調査の老舗、インドチャイナリサーチのマネージングダイレクター、カール・リモイ氏は、「ここ10年近くカンボジアの経済は年間6~7%の水準で成長を続けており、世界的に見てもかなりの発展スピードと言えます。世帯収入の増加、さらに中流階級が発達してきている。ここ数年は国際的な大手企業の参入も増えており、投入しようとするサービスのレベルも大きなポイントです。かなりのポテンシャルがあると思いますが、独特のマーケットの理解を深めることが重要になってきます。急激な成長により消費者の考え方も変化しているので、最新のカンボジア事情を把握していることが成功のカギとなるでしょう」と語った。



 また、20年以上リサーチの経験を有するBMRSのポウン・ヴッティ氏は、「例えば、レストランはただ食事ができるところから、清潔で質の高いサービスが求められるようになってきました。これは諸外国の影響が強いと思われます。今後、顧客の力が強くなるでしょう。消費量が増え、求めるレベルが高くなり、ただものを販売するだけの時代は終わります。消費者にはたくさんの選択肢があります。フェイスブックやインターネットでの口コミで会社が潰れる可能性すらあるのです」と、今後の消費者動向について語った。

ウェブメディア Online Media

 消費が活発な若者や中間層以上に効果的なのがウェブメディアだ。インターネットの普及率は、タイ35%、ベトナム48%と比較してカンボジアは9%と低いが(ITU 2014年)、プノンペンの若者に限れば、PCやスマートフォンの所有率は高い。

 一日1万超のアクセスがあるオンラインニュース、「トメイトメイ・ドットコム」のキー・ソクリム氏は、最近のメディアを取り巻く環境について、「一年前、新聞を読んでいた人達の多くはオンラインニュースを読み始めました。しっかりした教育を受けている人達も新聞ではなくオンラインニュースに移ってきています。また、収入が低い人達・田舎に住んでいる人達はテレビ・ラジオから情報を得ていますが、お金が無くてもスマートフォンを購入し始めました。彼らはオンラインニュースのことを知らなくともフェイスブックは見ます。つまりフェイスブックからオンラインニュースにアクセスすることができるので、自然に視界に入ってきているという状態です。ですから、私達のようなオンラインニュースにとってフェイスブックはとても重要です」と語った。



 カンボジアのフェイスブック利用者は2014年時点で142万人で、2か月ごとにほぼ倍に増加している。大手通信会社のスマートアクシアタCEO、トーマス・ハント氏は、「フェイスブックはカンボジアで最も利用されているサービスの一つです。フェイスブックとインターネットが同じものという認識を持っている人が多いと思います」と述べている。フェイスブックの調べによれば、カンボジアではモバイルデバイスからフェイスブックを利用する人は81%の116万人に上っている。スマートアクシアタはフェイスブックの“残りの50億人”をネットにつなげるプロジェクト「internet.org」をカンボジアで使用できるサービスを開始した。フェイスブックやオンラインニュースなどがデータ課金されずに利用できる。

 一日50万ページビューを獲得するクラシファイドサイト「クメール24」のティ・ラディ氏はフェイスブックの人気について、「情報の集めやすさ、発信のしやすさがその大きな理由だと思います」と述べている。



 カンボジアは与野党の二大政党であり、新聞やラジオなどのメディアはどちらかに偏った報道がされている。トメイトメイ・ドットコムのキー氏は、「カンボジアでは政治的な立場にある報道機関はとても多いのです。いくらでもあります。政府に対して肯定的なもの、否定的なものなど、何らかのポジションをとるメディアがほとんどです」と、カンボジアのメディアの現状について語っている。

 そのような状況の中、フェイスブックがカンボジアに浸透した理由として、クメール24のティ氏は、「カンボジアの人々は政治的に偏った情報は要らないと考えています。フェイスブックではリアルな情報収集が可能です。若者たちはフェイスブックなどのSNSを使って、リアルな情報交換を行っているのです」と述べている。

 カンボジアでも多くの企業が、広告・宣伝活動にフェイスブックマーケティングを取り入れている。そして、これもカンボジアの特徴であるが、いいね! も比較的簡単につきやすい。しかしフェイスブックが万能かといえば、そういう訳でもない。例えば、「携帯電話の情報を扱っている有名なフェイスブックページは3万いいね! を獲得しています。一方で私の教え子が作った同じようなウェブサイトは10万いいね! を獲得しました。ですから、一概にいいね! の数で効果があるとは言えないと思います」とクメール24のティ氏

 ある程度の認知には効果的ではあるが、他のマーケティング手段、メディアを併用して相乗効果を狙うことが必要のようだ。実際に、フェイスブックで自社サービスの宣伝をしても、そのまま購買や来店につながることは簡単ではない。

 「クーポンキング」を運営しているスタンディングオンザブリッジ代表の清野裕司氏は、「即購買につなげるという意味では、フェイスブックの投稿ごとに宣伝をかけていても必ずしも効果があるとは言えません。それほど魅力に感じていな投稿にも挨拶のように、いいね! を押してくれるので。大事なことはプロモーションが行きたいと思わせるものになっているかということ。さらに、他のメディアと連動させることが効果的です」と語った。

 まだまだプロモーション告知の意味ではフェイスブックの一強状態ではあるが、プノンペンの若者を中心に、ライン、スカイプ、バイバー、タンゴなど他のソーシャルメディアの利用が増えてきているので、フェイスブックだけでなく、複数のソーシャルメディアを使い分ける必要性がだんだん強くなってくるだろう。

 ウェブ広告に関しては、「近年ではとても一般的になってきています。これは新しいものが好きというカンボジアの国民性と関係があります。インターネットを使うことは新しい世代の象徴なんです。ネットサーフィンをしてウェブ広告を見ることは、新しい考え方で魅力的なものです。ウェブ広告を出している会社に対しては、先進的な印象を持ちますね」とクメール24のティ氏は言う。

 認知度の高いサイトはクメール24やDAPニュースの他に、ニュースサイトの「クメールロード」、また新聞のウェブサイト版である「カッサンテピアップ」や「スマイルカンボジア」、エンターテイメント情報を発信している「サバイ」などがある。これらのウェブサイトで特徴的なのが、好まれる話題やフェイスブックでシェアされるものに事故などの映像が多いということである。その理由は、「多くの人々は文字から情報を得るということに慣れていません。一方で、事故の映像や画像はとても分かりやすく彼らの感情に響きます。嬉しいとか悲しいとか、そういった感情が視覚的に認識できるので、とても分かりやすいんです。カンボジアでは、多くの人がまだ字を読めませんし、読めたとしても意味を理解するのはより難しいことです」とはトメイトメイ・ドットコムのキー氏

 また、今年に入ってから速報性の高いニュースサイト「FreshNews」をスタートさせたDAPメディアセンターのソイ・ソピーア氏は、「今まではニュースの配信スピードが遅かったのですが、最近では、いろんなメディアがITテクノロジーを駆使し、競争しています。ニュースが早いほど、新鮮な情報を伝えれ、メディア自身が頑張っていけます。今のカンボジアのメディアマーケットは、ニュースがパワーを持っているのです。最近では、ニュースがメインの番組構成になっている新しいチャンネルやコンテンツが増えています」と語った。

 マーケティングにおいても、そのことを踏まえて「映像や画像で分かりやすく感情に訴えることが反響につながるポイントになるだろう」と続けるのは、PR活動やイベントを手掛けるブレインズ・コミュニケーションのタシロ・ブリンザー氏。動画やインパクトのある絵、そして、分かりやすい内容で打ち出していくことが一つの手法となる。ユーチューブやバインなど動画コミュニケーションツールの活用が今後の鍵を握る。

テレビ Television

 スマートフォンの普及によって、以前と比較すると2~3割は視聴者が減少しているが、分かりやすさという点で考えると、テレビこそカンボジア人に広く訴求できるメディアだろう。国内に実に18チャンネルものテレビ局がしのぎを削っている。「ほぼ全ての層、文字を読めない人々にまでアプローチをすることが可能なメディアです。人気のあるテレビ局は、ホンミー、CTN、バイヨンTVなどが挙げられます」と、DAPメディアセンターのマネージングダイレクター、ソイ・ソピアップ氏。他にも情報省管轄の国営放送であるTVKや国軍保有のTV5などがある。TVKは国土の60%をカバーしており、2015年からのデジタル放送開始を表明している。クメール24のティ氏も、「化粧品など女性向けに広く告知したい場合に最適です。カンボジアの女性は日中家にいることが多く、テレビを観ることが好きな傾向にあるからです」と語っている。テレビCMというと一般的に広告費が高いイメージがあるが、カンボジアの場合は、日本のそれと比べると、10分の1程度の予算でできる。




 また、ブレインのブリンザー氏は、「昔はメディアに何か掲載してもらうのにもすべてお金がかかりましたが、近年はそれも正常化していて、国際基準に追いつきつつあると思います。ジャーナリストが取材をしたり、こちらが情報提供をしたりの持ちつ持たれつの環境が成り立ちつつあります。近年のソーシャルメディア出現によりずいぶんと変わりましたが、古くからある企業は新しいメディアに手を出さずに従来の新聞やテレビに頼りがちと感じています」と述べている。人気番組とスポンサーに関して、カンボジアで最も有名なテレビ局のひとつであるCTNのニュースダイレクターのナオ・ソポー氏は、「人気番組はニュースとエンターテイメント、例えばタイのドラマや週末のコンサート、ボクシングなどです。主なスポンサーは、家電メーカー、通信会社、飲料メーカー、化粧品、自動車ディーラーなどです」と語った。


088 カンボジアのマーケティング・メディア②へ続く


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