【運輸・物流】
(052 カンボジアの運輸・物流①からの続き)
税関ではASYCUDAシステムなどを導入し、EDI化(電子データ交換)している為、輸出入者は、そのシステムを利用し、その都度輸出入申告を行う必要がある。しかし、データ入力できる端末に台数の限りがあり、しかもデータが手入力作業となるため、商品項目が増えると入力手続きだけでも莫大な時間を要するという大きな問題点を抱えている。
そこで、2014年6月にカンボジア版AEOとも言われる BestTraders Initiative(BTI)が関税消費税総局により発足し、第一回認定者8社(そのうち日系企業は3社)に対する贈呈式が行われた。
これにより、自社内に設置された専用端末での操作が可能になる。これは過去に日・カンボジア官民合同会議等の際、数次に渡り当制度の導入についての議題が取り上げられており、この会議による優良成果事例と言えよう。しかしながら具体的な手続きや承認条件等に不明瞭な点も多く、明確な情報開示が待たれる。
運送だけではなく、検品業務も併せて行う、大森&トーマスの山崎氏は、「もともとは運送屋ですが、海上運送、航空運送だけではお客様は満足されず、メーカーなどが工場を作る際に、工場の建設や生産ラインの調整、原材料の輸入、製品の輸出、またそれらのコントロールなども一貫してやって欲しいという依頼が来るんです。その流れから検査の業務が始まりました」と述べる。検査内容としては、外見検査やX線検査、検針器という金属探知機を使用し、ミシン針などの混入がないかどうかも確認し、発注主と工場側との製品基準のギャップを埋める非常に重要な作業も担う。同氏は「本業である運輸をより注力していきながら、サービスの一環として検品センターを活用し、通関業務もコンテナの管理、検品など何から何まで一貫してワンストップ化を続けていきたい」と語る。
物流コストと労働コストと並び、製品品質も非常に重要なポイントとなるため、新たに進出される企業もどれか一方の条件でカンボジアの生産拠点としての適応性を見るのではなく、各分野において、進出に値する条件が整っているかをバランスよく見ることが求められる。
ASEAN経済共同体が発足後、どこまで規制が緩和されるか明確な情報は示されおらず、大森&トーマスの山崎氏は「AFTA※6を撤廃してASEAN一体をEPAにしてしまうのかどうかもわかりませんし、ASEANの東側諸国が加盟しているTPP、さらには日本とのEPAもあります。自国のシステムをどのように上手にASEAN経済共同体の中で取り込みつつ改善していくのか、個人的に興味があります。どこまで標準化されるのかが問題でしょうね。」と述べる。
輸出税やリスクマネジメントコントロールというシステムの導入を理由に、新たな徴収の動きもあり、関税が安くなる分、これらがどう影響するのか未知数であり、料金明瞭化に伴い、総合的なコスト高になる可能性もあるため、変化には注意が必要である。
※5 AEO(Authorized Economic Operator): 貨物のセキュリティー管理とコンプライアンスの体制が整備された者として、税関長の認定を受けた通関業者については、輸入者の委託を受けた輸入貨物の引取り後に納税申告を行うことや、輸出者の委託を受けて特定保税運送者による運送を前提に、貨物を保税地域に入れることなく輸出の許可を受けることを可能とする制度。
※6 AFTA(ASEAN Free Trade Area): ASEAN自由貿易地域。東南アジアにおける地域経済協力の一種。東南アジアの市場統合を通じて、EUや北米自由貿易協定(NAFTA)などの地域経済圏への対抗を図っている。
(054 カンボジアの運輸・物流③へ続く)