【マーケティング・メディア】
消費が活発な若者や中間層以上に効果的なのがウェブメディアだ。インターネットの普及率は、隣国タイが28.94%、ベトナム43.90%と比較してカンボジアは6.00%と低いが(ITU 2013年)、プノンペンの若者に限れば、PC、スマートフォンの所持率は高い。一日30万プレビューを獲得するウェブサイト「クメール24」を運営するティ・ラディー氏によれば、「私は大学で講師をしているのですが、経験から言えば、5年前は30人クラスでノートパソコンを持っている学生はわずか二人でした。しかし、現在は30人中28人がノートパソコンを持っています。また、クメール24のユーザーの30から50%はスマートフォンからのアクセスです」と語っている。価格を抑えた中国製商品の流通により、PC所持者は増加している。
ソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)の中でも、カンボジアで特に人気が高いのがフェイスブックだ。カンボジアのフェイスブックユーザーは2014年時点で142万人で、2か月ごとにほぼ倍に増加している。スマートアクシアタのトーマス・ハント氏は、「フェイスブックはカンボジアで最も利用されているサービスの一つです。フェイスブックとインターネットが同じものという認識をもっている人が多いと思います」と述べている。フェイスブックの調べによれば、カンボジアではモバイルデバイスからフェイスブックを利用する人は81%の116万人に上っており、スマートでは、スマートフォンを持たずにどのようなモバイルデバイスでもフェイスブックを利用できるサービスを開始している。クメール24のティ氏もフェイスブックの人気について、「情報の集めやすさ、発信のしやすさがその大きな理由だと思います」と述べている。
カンボジアは与野党の二大政党であり、新聞やラジオなどのメディアはどちらかに偏った報道がされている。大手オンラインニュースサイト「トメイトメイ・ドットコム」のキー・ソクリム氏は、「カンボジアでは政治的な立場にある報道機関はとても多いのです。いくらでもあります。政府に対して肯定的なもの、否定的なものなど、何らかのポジショニングをしているメディアがほとんどです」と、カンボジアのメディアの現状について語っている。
そのような状況の中、フェイスブックがカンボジアに浸透した理由として、クメール24のティ氏は「カンボジアの人々は政治的に偏った情報はいらないと考えています。フェイスブックではリアルな情報収集が可能です。若者たちはフェイスブックなどのSNSを使って、リアルな情報交換を行っているのです」と述べている。一般的にカンボジア人達は「友達」の数が多い。情報交換の手段としての側面も強いため知らない人でも友達になるが、実際には登録して日々情報を眺めるだけといった使い方をしている人が多い。
カンボジアでも多くの企業が、広告・宣伝活動にフェイスブックマーケティングを取り入れている。そして、これもカンボジアの特徴であるが、いいね! も比較的簡単につきやすい。例えば、「携帯電話の情報を扱っている有名なフェイスブックページは3万いいね! を獲得しています。一方で私の教え子が作った同じようなウェブサイトは10万いいね! を獲得しました。ですから、一概にいいね! の数で効果があるとは言えないと思います」とクメール24のティ氏。ある程度の認知には効果的であるが、他のマーケティング手段、メディアを併用して相乗効果を狙うことが必要のようだ。
ウェブ広告に関しては、「近年ではとても一般的になってきています。これは新しいものが好きというカンボジアの国民性と関係があります。インターネットを使うことは新しい世代の象徴なんです。ネットサーフィンをしてウェブ広告を見ることは、新しい考え方で魅力的なものです。ウェブ広告を出している会社に対しては、先進的な印象を持ちますね」とクメール24のティ氏は言う。プノンペンの若者に限って言えば、フェイスブックとウェブ広告の連動は効果的だろう。認知度の高いサイトはクメール24やDAPニュースの他に、ニュースサイトの「クメールロード」、また新聞のウェブサイト版である「カッサンテピアップ」や「スマイルカンボジア」、エンターテイメント情報を発信している「サバイ」などがある。
これらのウェブサイトで特徴的なのが、好まれる話題やフェイスブックでシェアされるものに事故などの映像が多いということである。その理由は、「多くの人々は文字から情報を得るということに慣れていません。一方で、事故の映像や画像はとても分かりやすく彼らの感情に響きます。嬉しいとか悲しいとか、そういった感情が視覚的に認識できるので、とても分かりやすいんです。カンボジアでは、多くの人がまだ字を読めませんし、読めたとしても意味を理解するのはより難しいことです」とはトメイトメイ・ドットコムのキー氏。マーケティングにおいても、映像や画像で分かりやすく感情に訴えることが反響につなげるポイントになるだろう。動画やインパクトのある絵、そして、分かりやすい内容で打ち出していくことが、一つの手法となる。