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2017年1月4日
カンボジア進出ガイド

【運輸・物流】

165 カンボジアの運輸・物流③(2016年11月発刊 ISSUE05より)

インフラの開発 Development of Infrastructure

 日本政府はカンボジアの国土開発と、隣国とのコネクティビティの一層の支援を強化するため、高速道路網の整備等の案件化や物流の活性化を通じた投資促進を支援することを表明しているが、道路、港湾、空港、鉄道、それぞれの経路も含めて未だ発展途上であるため、利用環境に対するさらなる改善が期待される。



 1992年に最初の会社を設立し、物流業をメインとしながらも不動産、貿易、メディア等、32の関連会社を持つワールドブリッジ・グループのシーア・リッティ氏は、「カンボジアの物流は、これからの投資が必要な業界です。最も大切なのはインフラの開発で、これには政府のサポートも重要になってきます。例えばインフラ開発を進める私企業に、政府が優位なスキームを提案し、企業は自社の物流コストを安くするためにインフラに投資をします」と述べる。ここでもカンボジア政府の取り組みが重要視される。

 また、同氏は、「これからは隣国と競争する必要が出てきますが、民間企業は未だ準備が整っていません」と付け加えた。ワールドブリッジはここ数年で1億2900万ドル投資しているが、さらにプノンペン南方に独自の経済特区設立のため1億ドルを投資する予定だ。

 車両数の増加や拡大した都市圏からの交通流入等により、プノンペンでは交通渋滞や交通事故数が深刻化しており、インフラの開発・整備による渋滞緩和と交通安全向上が急がれる。カンボジア政府による道路交通法の取り締まり強化の他に、日本政府による無償援助協力(ODA)で市内100ヶ所での既存の中国製信号機の入替えと、交通管制センターの新たな設置が検討されている。また、地下鉄やモノレール、路面電車などの旅客輸送システム(AGT)の敷設がJICAの援助の元で検討されており、2023年にも開通を目指している。

カンボジアの車両・交通事情 The Traffic Situation in Cambodia

 プノンペンの街並みは5年前と比べて大きく変わった。建設ラッシュも然りだが、毎日発生する交通渋滞もそのうちの1つだ。通行する車両量も増加し、整備不十分な道路インフラや徹底されていない交通ルールもあいまって常態化している。プノンペンはカンボジアの首都であり経済発展の牽引役であることから、効率的な都市への発展と更なる産業集積化が期待されているが、交通渋滞を含む都市問題も深刻化するとの懸念がある。

 新古車販売量が約10%増加するなど、プノンペン市内の車両量は現在増加の一途をたどる。しかしながらその内訳は、外国から輸入された中古車が市場の9割を占めており、新車利用者はごく一部の富裕層に限られる。カンボジアを除くASEAN7か国では中古車輸入が規制されている一方でカンボジアには同規制が欠如していることが、輸出先国での走行が許可されないような粗悪車両が集積する原因だ。修繕されて出回っているものの、安全性はカンボジア中古車市場の大きな課題だ。



 新車・中古車市場の現状について、フォードなど有名ブランドの新車販売や新車でのカーレンタル事業を行うタイ系コングロマリット企業、RMAカンボジアのノーン・サン氏は、「2015年時点の新車率はたったの15%でしたが、年率約5%というゆっくりとしたペースで新車市場は拡大しています。その理由として重要なのは、人々の収入が上昇し新車を購入できる余裕がある人が増えたという他に、カンボジアの中古車事情が理解され始めたという事があります。カンボジアに入ってきている中古車のほとんどは安全性に問題があるからです」と話す。

 安全性のほかに法制度の順守も市場に求められている。2015年にカンボジアに輸入された45,000台のうち、正規販売代理店によるものは1割で、残9割が非課税で販売された。そんな中、カンボジア自動車連盟(CAIF)は、消費者の利益保護と販売代理店の平準化のため、VATを支払っていないグレーマーケットで販売されている自動車の税金を引き上げ、中古車の輸入を禁止するよう政府に求めた。

カンボジアへの拠点移動 Moving into Cambodia

 海外進出・赴任の際の移動には何かと面倒が多く、サポートなしに成し遂げるには手間も時間もかかって大きな負担となる。特に発展途上国への引越しとなれば、治安面での不安から、入居先や現地での生活環境にもあらかじめ十分な配慮が必要だ。家族連れでの移住であれば、住居環境や教育環境もリサーチし、先に整えておくのが吉だろう。様々な個人情報が業者によって取り扱われ、場合によっては家財道具や電子機器なども運搬されるが、発展途上国での荷物運搬オペレーションには一抹の不安を覚えざるを得ない。

 アジアン・タイガース・モビリティーのグルー氏はカンボジア移住のトレンドについて、「現在は組織や企業の進出が増えて、オフィスの海外引越し件数も増加しています。また、良い病院や良い学校が出来たことにより、以前は男性の単身者が多かったのが、家族での移住が進んでいます」と話す。カンボジア国内の海外引越し業者は、アジアン・タイガース・モビリティの他に佐川急便ベトナムのカンボジア支店、日通カンボジア現地法人など日系もいくつか存在する。

 一方で、国内引越しに関するサービスクオリティについて同氏は、「我々は多国籍企業ですから、個人情報保護の重要性を十分に理解して、社員を教育・訓練しています。ですが小さなローカル企業では、個人情報を保護しなければいけないという概念さえ分かっていない場合もあります。また、新聞などで格安での引越しを謳っている場合、1人25~30ドルとかなり安いのですが、トゥクトゥクドライバーが1人で担当し、荷物を壊しても無くしても何の保証も無いことが多くあります」と付け加えた。法人の移動や家族連れとなると手続きも煩雑さが増すため、国際的な拠点移動の場合はもちろんのこと、カンボジア国内での引越しに際しても業者の選択は妥協せずに行うことが大切だ。


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