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2015年11月8日
カンボジア進出ガイド

【不動産】

078 カンボジアの不動産②(2015年10月発刊 ISSUE03より)

住宅の賃貸 Rental Housing

077 カンボジアの不動産①から続き
 住居として外国人に人気の高いエリアは、ボンケンコン1。プノンペンの富裕層エリアといわれており、カフェ激戦区となっている。しかし、家賃が高いため、いろんなエリアに少しずつ分散が進み、その周辺のボントラバエク(BT)、トゥールトンポン(TTP)、ボンケンコン(BKK2、3)、トンレバサック(TB)、プノンペンタワー裏の人気も高い。ボントラバエクやトンレバサック南部は新興住宅地で比較的新しい建物が多く、日本人が増えているエリアだ。また、ここに日本食屋などが並ぶ「絆ストリート」もあり今後注目のエリアである。立地的にPPSEZに勤務している方が多く住むトゥールコーク区のボンコック1、2(BK1、2)も高級住宅街として知られているが、設備の割に価格が抑えられた物件が多い。

 また、ロシアンマーケットの辺りも人気が上昇しており、比較的家賃が安価であることから欧米人を中心に外国人からの注目が集まっているエリアだ。このような居住エリアは生活のしやすさという点が重要であり、家賃の安さもさることながら、美味しいレストランやショップの存在は大きい。

 カンボジアの住居形態は、サービスアパート、コンドミニアム、ヴィラ(一軒家)、プテアロベーン(フラット)などがある。サービスアパートは24時間警備のほか、プールやジム、部屋の掃除や洗濯など、ハード面だけでなく、ソフト面も充実している物件が多い。



忙しいビジネスマンのために買い物サービスもある、日本人が常駐しているサービスアパートを提供するTAMAホームの上田武範氏は、「立地が良く、広くて家具もきれいというサービスアパートが人気ですが、1人であれば1,000~1,500ドルは最低かかります。ファミリータイプは2,000ドル以上するでしょう。クリーニングサービスには掃除や洗い物、リネン交換なども含まれていますが、お洗濯は付いていない所が多いようです。また、古くてもいいから中心に住みたい気持ちもわかりますが、駐在員などのお客様には赴任期間が限定されているからこそ、心のゆとりや、ここで頑張って欲しいと言う意味も込めて、家に帰りたくなるような住まいを提供できたらと思っています」と語った。仕事に集中するためにも住環境の整備は大切であることから、賃貸物件の選択には十分留意したい。

CPLのケイン氏は、「私たちはお客様にサービスを提供するときは3つの事項を詳しくヒアリングします。まず①お客様は何を求めているか、②場所はどこがいいのか、③なぜ物件を探しているのか、の三点。これらは時に個人的な内容を含みますが、嫌がらず出来るだけしっかりと答えて頂きたいなと思います。まずお客様がこの三点を曖昧にされていると、おそらく自身に合った物件を決めることが出来ないし、また私たちもご提案出来なくなってしまいます。お客様に100%のサービスを提供するために、この三点の確認作業は重要なものなのです」と住居探しのアドバイスをする。セキュリティや治安、住み心地など、重視する点を考慮し、現地をしっかりと見たうえで検討したい。



 なお、日本に居ながら賃貸物件を探す場合には、賃貸情報サイト「アンコールホーム(angkor-home.com)」を利用することができる。日本語・英語でのメール対応が可能で多くの外国人が利用している。

不動産の購入 Investing in property

 カンボジアでは憲法第44条において、外国人または企業が土地を所有することはできないと明記されているが、例外として土地を購入するためには、クメール資本51%以上の合弁会社により購入する等の条件がある。まず、購入する土地を選定する上で、売手の持っている書類がハードタイトルかソフトタイトルかを確認する必要がある。JICA国際協力専門員、磯井美葉氏は、報告書「カンボジアの不動産登記について」内で、権利証について以下のように記述している。

 Systematic RegistrationおよびSporadicRegistrationにより発行された権利証または占有権証明書等は、実務上ハードタイトルと呼ばれる。
 これに対して、ソフトタイトルと呼ばれるものも流通している。これには登記手続の前提としてコミューンチーフ※1が占有状態を証明した書類、Sporadic Registrationの「受理書」など、いくつかの種類があるようである。地籍局に登記されていない土地について、これらのソフトタイトルを相手に交付することによって、担保を設定したり、所有権を移転したりする慣行があるようだが、複数の人が同じ土地について権利を主張する等、不安定、不確実なものであり、紛争の原因ともなっている。
 所有権が認定され、登記がされた後に所有権移転等によって変更登記を行う際は、登記簿の記載を変更するとともに、旧所有者が手元に保有する権利証等を地籍局に提出し、権利証等にも登記簿と同様に変更の記載をすることになっている。


 一方で、コンドミニアムなどを小規模のオフィススペースとして区分所有する方法もある。コンドミニアムは当初は建築者の名義で所有権が登記され、分譲されると新しい所有者の名義が登記されるとともに、各戸の所有者に対しハードタイトルが発行される。これらは、コンドミニアムなどの区分所有建物を建築する場合の義務とされている。区分所有建物の登記について、磯井氏は同報告書内で以下のように記述している。

 これらの登記簿の作成の申請は、区分所有建物を建築する場合の義務とされているが、必ずしも行われていない場合があり、プノンペン市内でも、権利証(ハードタイトル)のないコンドミニアムが売り出されている例があるようである。

 IPSのマーフィー氏は、「会社として物件を購入する場合、所有権を考えたほうがいいですね。権利証等がない物件の場合、有効な所有権の取り決めをする必要があります。正式に登記された会社の場合、ランドホールディングカンパニーを設立して土地を登記します。これだけではリスクが高いので議決権を51%以上にする必要がありますね。こうすればローカルパートナーの名義が含まれたとしても会社の判断に口出しをすることが不可能となります。さらにこれは人気の高い方法で特に住宅で多いのですが、ノミニー※2 制度を利用するものです。カンボジア人の友人もしくはノミニーの扱いのある会社もしくは弁護士や不動産会社を通して設定します。あなたの資金で、しかし名義はカンボジア人のものになります。そこに100%の不動産抵当権を付けることにより、抵当の除外もしくは満額支払いがない限りは第三者に売り渡すことができないのです。このような手法で土地を守ります。ですからまずはどのシステムなら納得できるか決める。何に必要なのか、投機目的の購入なのか、ロケーションありきなのか、ハイエンド物件を探しているのか、長期の投資を考えるならば、住宅と商業物件の両方を検討する必要があります。まずは自身のニーズを考えること、次に信頼できる代理店を探すことです」と語った。

不動産の管理 Management of real estate
 ビル管理に於いて、専門的マネジメントは重要項目だ。借り受ける側からすると、一定の水準でのサービス維持、問題があった際の対応など求められることは多岐にわたる。

 CBREのパデン氏は、「ビルをきちんと管理することにより物件そのものの耐用年数が延び、稼働率も向上します。きちんと管理の行き届いた物件の方が市場の中でも魅力的になるかと思います。ディベロッパーは計画段階でビル管理まで考えた計画立案をすることが重要です。初期段階で管理会社を交えた展望を持つことで稼働率利益率ともに上がりますし、管理側の視点で見た問題点への対策も可能です。これは例えば駐車場のデザインミス、配線やパイプスペースの効率的な配置なども完成後のコスト管理を大きく左右します」と語る。

 また、NURI D&Cのグループ副社長、アンドリュー氏は、「今までのローカルの開発業者は初期建設コストばかりを見ていたので初期コストを抑えれば抑えるほど物件にぼろが出るのは時間の問題です。そのようなメンテナンスコストをローカル会社は着目してこなかったのだと思います。我が社や近年の国際的な開発会社は初期コストよりもいかに長期スパンでメンテナンスコストを抑えるかに重きを置いています」とデベロッパー側の意見を述べている。

※1 コミューンチーフ: カンボジアの地方行政には、州、郡、コミューンという三つの行政区分がある。コミューンは人口1万5千人から2万人の規模をもつ行政体で、コミューンの下には村がある。一つのコミューンにつき8~10の村がある。

※2 ノミニー: 合法的にプライバシーを保護することができる。法人登記時にオーナーの個人情報を使うことなく登記することが可能。
079 カンボジアの建築・内装①へ続く


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