2017年6月29日
—事業をはじめたきっかけは。
弊社は、2013年4月に5万ドルの出資を受ける形で、デザイナー1人・開発エンジニア4人の合計5人で会社を立ち上げました。立ち上げ当時は、ウェブやモバイルアプリの開発に関わるサービスを提供する会社もなかったため、ニーズを見込んでサービスを開始しました。現CEOとは、フェースブックコミュニティーを通じて、友人からの紹介を受けて2012年に知り合いました。知り合ってから同じプロジェクトに携わるようになり、その後、NEX立ち上げメンバーとして一緒に仕事をすることになりました。
現在、IT関連の仕事に関しては、どんなことでも対応しています。マーケティング戦略の立案から、ロゴ作成やブランディングといったデザイン、ウェブサイトやモバイルアプリの開発、デジタルマーケティング、インスタグラムやフェースブック等のメディアマネジメントまで請け負っています。顧客企業の業界は幅広く、飲食業や教育機関など、多岐にわたります。
— 市場環境はどうでしょう。
社内案件を見る限り、ソーシャルメディアの運用を含む、デジタルマーケティングのニーズ拡大が最近のトレンドです。デジタルマーケティングが、弊社で請け負う仕事の3〜4割を占めるまでに成長してきていますし、市場全体も急成長しています。事業立ち上げの2013年頃は、IT関連サービスが提供できる企業は他にほとんどありませんでした。というのも、スマートフォンは一般に普及しておらず、インターネット環境も未整備。いつか整備される環境を見越してのウェブサイト制作以外は、パンフレットやフライヤーのデザイン、テレビCM制作、ロゴデザインといったオフライン業務が中心でした。
それが今では、デジタルマーケティングが中心業務になり、モバイルアプリ開発、ウェブ開発案件も増え、業務内容全体が大きくオンラインの方へとシフトしています。ロゴ作成やブランディングに関する案件は今も請け負っていますが、デジタル化の流れは止められません。スマホ保有者も増えていますし、今後、通信環境がさらに改善されていくにつれ、デジタルマーケティングに関する需要がさらに拡大していくことは間違いないでしょう。
ミャンマー企業からの受注が増加しているのも、市場全体のトレンドの1つといえるでしょう。日系企業との取引もいくつかありますが、全社的には、以前より外資企業の案件の割合が下がってきています。しかし全体で見れば、IT市場の拡大は間違いありません。
— 市場が拡大していく上での課題は。
ミャンマー語のフォントに関する問題は根深いものがあります。ZawgyiとUnicodeの2種類が並存しているため、ウェブ上で検索を掛けてもヒットしないケースが多々あります。Zawgyiで検索しても、Unicodeで書かれた記事にはヒットしないのです。 これまでのミャンマー語フォントは、入力のしやすさからZawgyiフォントが一般的に流通していました。しかし、2016年にミャンマー政府が、Unicodeに移行していく方針を明確に打ち出し、GoogleやFacebookもUnicodeフォントを採用することを正式に発表しました。今後はUnicodeフォントに統一されていき、解決の方向に向かっていきます。フォントが統一されれば、ウェブ上で情報を検索した人が目的の情報に辿り着くことも容易になるため、ウェブ検索をする人の数も増えていくでしょう。
1番大きな課題はフォント問題ですが、他にも課題はあります。例えば、通信環境に関するもの、モバイルアプリの拡散の難しさ、依頼企業のITへの理解度の低さの3点があります。
ネット環境については、よくなってきてはいますが、とりわけ安定性については十分とはいえない水準です。地方部にも行き届いていませんし、時間は掛かるとは思いますが、今後の改善に期待したいところです。モバイルアプリに関しては、アプリを検索してダウンロードする方法を知らない人が多いのが現実です。よって、ファイル転送アプリでの拡散、SNSメッセージでの拡散、フェースブックのシェア等で広げていくしかありません。例えば、自社開発で、ローマ字でミャンマー語入力をすると、ミャンマー語に変換されるアプリをリリースした際は、こちらから仕掛け、多くの人のシェアによって拡散しました。現時点は、地道な方法しかないため、モバイルアプリの拡散には課題が残ります。お客様にIT関連の提案をしても、なかなか理解されないことも多いのが現実です。我々の会社のポリシーはお客様に寄り添うことです。お客様と一緒に考え、我々の考える最適な提案を通じて理解度を深めていくことで、目的に沿ったIT利用の最適解を探し続けていきます。
—ミャンマーでは「フェースブック=インターネット」の状況だと感じています。今後の動きをどのように見ていますか。
おっしゃる通りです。しかし、フェースブックからインターネットへシフトする時代は必ず来るでしょう。私もその時を待ち望んでいます。3〜5年もすれば、人々がスマホで買い物し、現時点や目的地を地図アプリで検索し、知りたい情報をウェブで探す時代になっているでしょう。フェースブックで探すよりも圧倒的に便利で簡単ですからね。利便性が高いものは必ずシェア等を通じて広まっていきます。例えば、学校探し1つ取っても、今は口コミや新聞がメインですが、今後は、オンラインで探すようになるでしょう。さらにいえば、オンライン上での学習へ移行していく可能性も秘めています。ITが実現を後押しするでしょう。
アプリの利用者も間違いなく増えていくでしょう。現在リリースされているタクシー配車アプリやオンラインショッピングアプリの一部は、すべてがミャンマー語表記で、入力も簡単で操作性も高くなっています。使いやすく便利なアプリは、アプリ利用者の拡大に大きく貢献するでしょう。利便性の高いサービスは人々の生活を快適なものに変えていきますし、便利さを求めて利用する人も増えていくでしょう。そうなれば、ウェブサービスに関しても、モバイルアプリに関しても、間違いなく需要は拡大していくでしょう。
—次の一手は。
弊社は、最近追加出資も受け、事業拡大の準備は整っています。現在は、マンダレーでのビジネス展開を準備しています。メンバーも早々に60名規模に拡大していきます。現在の流れを組めば、デジタルマーケティングが事業の中心になっていくでしょう。これまでは商品説明一辺倒だったマーケティングに、インフルエンサーマーケティング等も交えた新たな取り組みで、仕掛けていきます。マーケティング分野のみでなく、IT技術を活用してカスタマーサービスをよりシンプルでスピーディーなものにしていきたいとも思います。銀行の窓口対応、オンラインマネーの取引、航空券の購入など、ITを導入することで、まだまだ業務改善は可能です。AI(人工知能)分野に関しても、積極的に仕掛けていきたいと考えています。IT分野における支援を通じてお客様に寄り添いながら、企業の発展に貢献していければ、と思います。