2017年6月23日
―ミャンマーでは、まだ地元企業の広くに複合機が普及しているわけではないかと思います。ミャンマーの市場をどう見ていますか。
私たちは各国の市場を、新興国のピンシェイプ型(低価格機がほとんどで、中級機、高級機が少ない)、中進国のカウベル型(低価格機が多く、中級機もある程度の需要があり、高級機は少ない)、先進国のトップアップ型(低価格機、高級機の需要も高いが、中級機が最も多い)の3つに分類しています。新興国ではやはり低価格機が売れるのですが、リースや割賦販売などの金融制度が整ってきた中進国では、長期に分けて費用を支払うことで初期費用が少なくすむため、中級機が売れるようになります。
ミャンマーですが、私がミャンマーに赴任した3年半前は1,000ドル程度の白黒の印刷機がメインでしたが、今は5,000ドルするカラー複合機を購入する現地企業が多くなり、弊社ミャンマー支店で販売する製品の約7割がこのクラスになりました。
これは外資系企業が次々とミャンマーの市場に登場して、地元企業が競争にさらされていることが一因です。外資系企業がカラフルで訴求力のある提案書を持ってくるのに、ミャンマー企業が白黒では、取引先の決定権限のある経営陣にアピールできません。
市場環境は急速に変化していると言えます。ミャンマーは一人当たり国内総生産(GDP)が1000ドルを超え、消費爆発の前夜だと考えています。
弊社は昨年3月に販売戦略を見直す改革を行った後、販売台数が3倍に増えました。商品を入れ替えたほか、販売店側により利益が出るように制度を変更しました。人気歌手のニーニーキンゾーさんをブランドアンバサダーに起用したことも当たりました。販売店の関係者を呼んだイベントで、ニーニーキンゾーさんを突如登場させ、ブランドアンバサダー就任を発表したのですが、それによって「ゼロックスは本気だ」と思ってもらったようです。
―ミャンマー企業向けにはどのようなアプローチを採っているのですか。
複合機の専業メーカーであるという専門性をアピールしています。
また、この業界のミャンマーに支店を設けている外資系メーカーは弊社だけです。
例えば、ミャンマー企業向けに「集約化提案」というコンサルティングに近い提案を行っています。
いま、多くの地元企業では、多くの部署がそれぞれパソコンやプリンターを購入し、それぞれOA用紙を調達しているため、経営者であっても実際にどれくらいの費用がかかっているのか把握できていません。また、事務機器の種類もバラバラなので、トナーなどの備品を別々に購入する必要が生じ、コストアップになっています。そこで、弊社のスタッフが一週間毎日その会社を訪れ、各部署でどのような誰が機器を使ってどのくらいプリントを行っているか、徹底的に調べます。そのうえで、弊社の機器に統一すれば、これだけにコストカットができるということを、数字で示します。
そうすると、ミャンマーの経営者は「こんなにコストがかかっていたのか」と驚くのです。「これを待っていた」と評価いただく声も聞きました。50台あったプリンターを、7台まで集約したケースもあります。また、社員と話すうちに、現場の課題も浮かび上がって来るので、改善を提案できます。もちろん、機器を購入いただくまでは費用は発生しません。
一方で、小さいロットに対応できるバリアブル印刷も力を入れます。例えば、携帯電話料金の請求書や、銀行の取引残高明細などは、顧客一人一人違った印刷を、短時間で行わなくてはいけません。ミャンマーではこれまであまり使われてきませんでしたが、発展とともに需要が伸びると考えています。
―初めてミャンマーに進出する企業が御社の製品を購入するケースが多いと思います。どのようなサービスを行っていますか。
チームジャパンでサポートすることができます。日本水準を求める顧客に対しては、信頼できる日系企業が手を組んで総合的にお手伝いします。弊社の事務所が進出コンサルタントのように、各種の相談に乗るようにしています。例えば、ネットワークを引く場合には、要望や状況によって、KDDIミャンマーやNTTコミュニケーションズなど複数の日系企業を紹介できます。
また、富士通製のパソコンやスキャナーを納入することもできます。また、警備会社のセコムと連携し、オフィスの出入り口のカギになるカードと、複合機の認証に使うカードを統一するシステムも開発しています。
ミャンマー支店は、日本人スタッフを配置して手厚くサポートしており、ミャンマーの日系企業では8割のシェアとなっています。また、タイ人や韓国人のスタッフも配置しています。
―今後のミャンマーではどのような構想がありますか。
そうですね。ミャンマー企業でのシェアを高めていきたいと思います。アジア地域のA3複合機ではトップシェアですので、ミャンマーでも同じようにナンバーワンを目指して行きたいと思います。また、子どもに教科書を配るプロジェクトなど企業の社会的責任(CSR)活動や、部品の再利用や再資源化など、廃棄物をなくす環境保護活動にも力を入れたいと思います。