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業界別インタビュー

2017年6月23日

関わった人が立派な起業家として成功している姿を見たい

HR・人材育成

フォーバルミャンマー FORVAL MYANMAR
代表取締役社長: 松村 健  Matsumura Ken
関わった人が立派な起業家として成功している姿を見たい
「事業の軸は人の成長。ミャンマーで自走できるリーダーを育てたい。」そう熱く語るのはフォーバルミャンマーの松村氏だ。日本企業のミャンマー進出を支援し、ミャンマー国内では研修事業も手掛ける。ミャンマー国内でのリーダー育成に強い想いを抱く松村氏に話を聞いた。(取材日/2016年12月)
人の成長あらずして、国の成長はない

―ミャンマーではどのような事業を展開していますか?

人の成長あらずして、国の成長はありません。ですから、我々の事業の軸には、人の成長があります。実際のビジネスにおいては、日本企業のミャンマー進出支援におけるワンストップサービス業務を展開しています。人と人との関係構築に寄与して、信頼構築をしていきたいと考えています。ミャンマー国内では、日本人の駐在員向けの研修やミャンマー人スタッフ向けの研修も展開し、人の成長に深く関わっています。
 中長期的には、このビジネスを通じて、日本とミャンマーの人に貢献していきたいと考えています。あくまでも人の成長に貢献する、ここがすべての根幹です。

自走できるリーダーを育てたい

―ミャンマーで、育てたいのはどんな人材ですか?

 「自走できるリーダーを育てたい」「強い実行者を育てたい」とのイメージは常に思い描いています。自走できるリーダーに不可欠なのは、実行力。口を出すだけでなく実行することが大切です。ミャンマーの人たちはその辺り、シビアに見ていますしね。
 働く1人1人が各人に与えられた役割と責任に対して、誠実に向き合い強い実行者であれば、その会社は必ずいい会社になるはずです。
 理想を語る一方で、これまでの3年を改めて振り返ってみると、自分自身、まったく自走できていなかった、と深く反省しています。まだまだ自分自身が走れるはずだし、もっと色んな事ができるはずです。まずは自分が自走しよう、と最近になって心を新たにした次第です。
 今、自分自身が問われている、と強く感じています。だからこそ、自らを磨いていかないといけません。同時に、私自身が自走するリーダーである必要があります。そんな自分の後ろ姿を見せることで、ミャンマーの人たちに少しでも共感してもらえれば、と思っています。押し付けではなく、謙虚ながらも、自信に満ちたリーダー像が私にとっての理想です。
 よほど戦略が間違っていない限り、経営はリーダーで変わりますし、すべての経営責任は私にあります。だからこそ、おごることなく、自分自身を常に磨き続けねば、との想いです。

―お客様である企業の人材育成に対する考えは?

 日系企業でもミャンマー企業でも教育に関しては複雑な想いを抱いています。もちろん日系企業は、人材の育成・教育に時間もお金も掛けようとの想いは強い方が多いです。人の大切さをよく理解されています。
 その一方で、人材の育成・教育にお金を掛けたくない、と考えている方も存在します。せっかく育てた人材が2年経たないうちに辞めてしまった、海外研修の機会を与えて戻ってきたと思ったら転職をしてしまった、そんな苦い経験をしている方が少なくありません。ミャンマー人経営者と話していてもよく耳にする話です。むしろミャンマー企業の方が痛手を被っているかもしれません。こうした不測の事態が何度も発生してしまえば、人材の育成や教育にお金を掛けようと思わなくなるでしょう。企業側の気持ちも痛いほどよくわかります。

 一方で、ジョブホップを繰り返す従業員側の気持ちもわかります。
今、多くのミャンマーの方が働くミャンマー企業は、ファミリービジネスか起業家自ら立ち上げた会社が多くを占めます。起業家が現役バリバリで一線で活躍していたり、役員一覧や株主一覧を見れば家族・親戚が名前を連ねていたりするような状況です。そんな中では、社内で昇格し、将来的に社長や役員を目指す、といった目標は描けないですよね。この点は日本とは大きく周辺環境が異なります。
 こうした環境下であれば、独立して自ら起業家となりたい、と目標を掲げたくなる気持ちはよくわかります。優秀なナンバー2がいる会社もありますが、優秀な方こそ早々に見切りをつけて、出ていってしまう傾向にもあります。

会社のビジネスに誇りが持てているかどうか

―優秀な方に長く働いてもらうためのポイントはどこにあるとお考えですか?

 社員が求めていることは、日本でもここミャンマーでも変わりません。わかりやすく3つに絞れば、お金、成長実感、やりがいです。
 お金の中には、福利厚生やいざとなった時に家族を守ることができる、といった要素も含まれます。特に家族を大切にするミャンマーでは大切な要素で、避けて通れません。
 成長実感とは、言い方を変えれば、今いる会社の中で仕事を通じて自己成長が実現できる、と本人に思ってもらえているかどうかです。教育機会の提供もこの中に含まれます。
 やりがいもまた大切な要素です。他の言い方をすれば、会社のビジネスに誇りが持てているかどうか。例えば、社会への貢献度、会社のビジョンが共有されていることは、1つのポイントとなります。

 あわせて、リーダー自身の人間力の高さも極めて大切な要素です。
ミャンマー企業を見ても、優れた経営者は人間としての求心力が高い方ばかりです。人間力を言葉で定義するのは難しいですが、決して外すことのできない要素です。
 日系企業でありがちなのは、上司が変わってスタッフが辞めてしまう、というケース。大企業であれば、人事ローテーションがあります。後任の方が来てもすぐに任務を開始できる強さは素晴らしいものがあります。一方で、任期があることで、人間関係が希薄になってしまいがちです。駐在員は異動慣れしていることもあり、3年で日本に帰るから、との意識がどこかで働いてしまうのかもしれません。
 またミャンマーの場合は他国に比べて生活環境が整っていません。
よって、いつの間にか「早く日本に帰りたい」ともなりがちです。
そうした情熱の薄れが、多かれ少なかれ表に出れば、敏感なミャンマーの人達は気付きます。
 リーダーの人間力・コミットメントが重要です。コミットメントに関して、カンボジアで先輩から貴重なお話をお伺いしたことがあります。突然に「嵐で船が沈むとき、お前はどこにいる?」そう尋ねられました。その方がおっしゃられたのは「マストに身体を括りつけて、船と一緒に沈む覚悟があるかどうか。それがコミットメントだ。」との言葉でした。我が身につまされる想いで、その言葉は今も心に強く残っています。

―ミャンマーの課題として感じることはありますか?

 ミャンマーはこれまでの歴史的背景もあってか、多くの人が従う人として生きてきたように思います。閉ざされた数十年があったため、言われたことに従う、それこそが最適解でした。これまでの数十年、出る杭は打たれるシステムだったことが深く影響しているのだと思います。上だけを見ていて、言われたことだけはやる、そんなイメージでしょうか。
 その影響もあってか「リーダーをやってくれ」と任命されて、困ってしまうスタッフもいます。こうした場面では、年長者を敬う宗教的な背景が逆に働いてしまうのです。コインの裏表の関係なので、考えを否定するのではなく、うまく使い分けることが大切です。
 歴史的背景はあれども、組織にはリーダーの存在が必要です。だからこそ、リーダーの育成が必要だと思っています。冒頭にも語りましたが、自走できるリーダーの存在が必要なのです。リーダー育成こそが課題であり、同時に私の成し遂げたいことでもあります。

関わった人が立派な起業家として成功している姿をたくさん見たい

―ミャンマーで成し遂げたいことを聞かせてください。

 個人的な目標としては、日系企業・ミャンマー企業の双方から「この人に聞いてみたら?」「この会社に行ってみたら?」そう言われる存在になりたいと思っています。
信頼に裏打ちされたネットワークの中で、そう言われるような存在が理想です。そんな関係が、商売じゃないけれど商売になっていく、そんなイメージを思い描いています。
 また、コンサルティングやトレーニングを通じて、私と関わった人が起業家として成功している姿をたくさん見たいです。まだまだ自分は未熟であり、日々反省することばかりです。しかし、私自身これまでにご縁をいただき、経営者側の立場も、幾つか経験させていただきました。そんな私の経験がお役に立てるケースもあり、色んな方をサポートする機会をいただけています。
私が何らかの影響を与えた人たちが、立派な成功者と呼ばれている姿をたくさん見たいですね。


フォーバルミャンマー FORVAL MYANMAR
事業内容:HR・人材育成
URL: http://www.forval.co.jp

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