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業界別インタビュー

2017年6月23日

“ワンパナソニック”としてミャンマーの人々を豊かにしていきたい

不動産・建設・オフィス

パナソニックアジアパシフィック Panasonic Asia Pacific Pte.Ltd.
マーケティングマネージャー: 渡邉 兼一郎 Kenichiro Watanabe
“ワンパナソニック”としてミャンマーの人々を豊かにしていきたい
本当の建設ラッシュはこれからだ。家電のイメージが強いパナソニックだが、ビルやコンドミニアムの建設時には、エアコンや配線器具等多くの同社製品が世界中で利用されている。パナソニックミャンマー支店にて、オフィスビルやコンドミニアム向けの業務用エアコンを主に担当するマーケティングマネージャーの渡邉兼一郎氏にミャンマーのマーケットが抱える課題や今後の展望を聞いた。
18の代理店と連携し市場を開拓する

―家電のみならず、多くのプロダクトを展開されてますね。

 パナソニックといえば、テレビや冷蔵庫などの家電のイメージが先行すると思いますが、様々なマーケットに対して製品を展開しております。現在、ミャンマー国内でパナソニックの製品を扱っている代理店は18社となりました。家電(黒物、白物、美容家電含む)、エアコン、大型冷蔵庫・スーパーのショーケース、スイッチ・コンセント・配線類、ソーラーパネル、ホームエレベーター・トイレ・キッチン・シャワー・家の建材・換気扇、電池・カーバッテリー・照明、溶接システム、PBX・CCTV、プロジェクター、映像カメラ、デジタルサイネージと、様々な製品の提供させて頂いています。

―ミャンマー赴任のきっかけは。

 入社以来、技術畑でキャリアを積んできました。日本では研究所勤務で、有機EL照明の基礎研究に携わる研究者でした。しかし昔からアジア地域に対して強い興味があり、弊社がミャンマーを含め世界各国で行なっているソーラーランタン事業に強く興味を持っておりました。照明の研究開発を担当していた自分にとっては、真逆の場とも言えるその最前線に身を置きたいと希望を持っておりました。
そんな中、会社の戦略としても新興国に深く入り込み、マーケットを開拓していくというテーマがあり、長期的にビジネスを展開できる人材を育成する社内プログラムが発足しました。そのプロジェクトに応募したところ、社内選考を通過し、2015年8月よりミャンマーでの生活が始まりました。
来緬から1年間は、ダウンタウン地区の一般的なアパートに住まいを構え、語学学校に通ったり、ミャンマーの地方で活動されているNGOに訪問させていただきボランティアを行ったり、一般のミャンマー人に混じって出家したりという生活を通してミャンマー語とミャンマー人の文化を体で学びました。2016年8月からは、その経験と語学力を活かし、ミャンマー支店で勤務しています。

目の前の販売価格に引っ張られてしまう傾向がまだまだ強い

− 中国メーカーが強いと聞いています。

 まだまだ中国製品が優位なマーケットです。例えば、エアコン全体のシェアの40%は中国メーカーが占めています。中国製品は、とにかく価格が安い。その代わり機能を絞っていたり、サポートが乏しい状況です。ミャンマーにおいては、ランニングコストや、メンテナンスに対する意識がまだまだ低く、いかに初期投資を低く抑えるかがすべてになってしまっています。長期的に見れば、お客様にとって最善の選択ではないと感じていますがそれが現状です。

 弊社ではミャンマー市場向けに、対応温度を引き上げたミャンマーモデルを投入しています。特に、マンダレーなど中央乾燥地帯では43度を超えることも珍しくないため、最高52度の外気温でも正常に動作するよう設計されています。
 中国メーカーの製品も猛暑の中でも稼動しますが、それはリミッター等の安全装置が装備されていないだけであって、過酷な状況を想定した構造ではないため、結果的に故障が増え、製品寿命も短くなります。こういった事例をミャンマーの消費者の方々に説明をしても、理解が得られないケースがほとんどです。
 また電圧が安定しない(標準は220-240Vながら、180Vまで低下することも頻繁にある)ことも主な故障原因の1つです。また頻発する停電等、エアコン機器に対する負荷は想像以上のものがあり、中国製品が壊れた、との話題は頻繁に耳にします。一方で弊社ミャンマーモデルは、電圧の上下にも対応し、故障が発生しにくい設計となっています。時間はかかるかもしれませんが、ミャンマーの皆様が積極的に弊社のエアコンを選んで頂く日が必ずやってくると信じています。

―市場をしっかりと見ていますね。

 パナソニックとしては、サービス体制を強調して市場に訴えかけており、サービスセンターの充実をはかっています。2015年度に4店舗、2016年に11店舗、センターを拡大し、今では合計15店舗の体制となっています。ヤンゴン・マンダレーだけでなく、その他の地方都市にも展開し、広くサービスが行き届く体制を整えています。
 他国の事例でいえば、一人当たりGDPが3000ドルを超えたベトナムのホーチミン、ハノイではパナソニック製品に対する支持が急速に拡がっています。ミャンマーの地においてベトナムのようにパナソニック製品が支持を得るまでにはまだまだ時間はかかるでしょう。しかし、来たるべきそのタイミングに備え、サポート体制のさらなる充実もはじめとした地盤を揺るぎないものにしていきたいと考えています。
 

突然の制度変更も発生している

―法人向けのマーケットはどう捉えていらっしゃいますか。

 業務用製品やシステム商材をワンストップで提供する事により、納品時から納品後のサービスまでお客様対応を一貫してサポートしています。結果的に、商品毎に生じる個別の問い合わせを一括で承ることができるため、お客様の時間と手間を削減しています。
 特に法人のお客様からは、日系メーカーとして日本と同等のサービス品質を求められる中で、ミャンマー人だけでは対応が難しい場面もどうしても存在してしまうと思いますが、そのようなケースにおいては、必ず日本人対日本人のホットラインで安心と安全を提供しております。これは日本人スタッフを多く抱えるパナソニックミャンマー支店の強みの一つと考えております。

―苦労も多いかと思います。

 新政権に対する期待は申し上げるまでもないですが、2016年5月には、YCDCの建築基準への適合確認を目的として、建設プロジェクトが一時差し止めとなりました。前政権時代に認可が下りていた9階建て以上の高層ビル建設プロジェクト、200件超が一斉に止まってしまいました。
 新基準が7月に公表され、順次差し止められていた建設は再開が進んでいますが、工事を一度止めてしまったために建設労働者の確保や資金繰りが困難となり再開の目処が立っていない建設プロジェクトも多数存在します。
当然ながら政府も国をよくするために、政策を発表していると思いますが、急な発表や、多少極端な政策も見聞きします。ビジネスを行う上では、政策変更の影響やリスクについても盛り込んでおく必要があります。
 ただ、建設需要は中長期的にいえば、間違いなく増えていきますし、エアコンや配線器具・照明・換気扇・PBX・CCTVなどをワンストップで提案ができるのは世界でもパナソニックだけです。多少のリスクは抱えますが、今から地盤を固めることで、市場から選ばれる存在になっていきたいと思います。

受け継がれる松下幸之助の経営哲学

− パナソニックとしてミャンマーにどのような価値を提供したいと考えていますか。

 実はパナソニックとミャンマーには古くからの深い縁があります。1964年、戦後賠償の一環で、日本国として、ミャンマーの工業化を技術的に支援するために、当時の松下電器を含む4社がミャンマーで工場の操業を開始しました。一時は電池、電球、蛍光灯、配線器具、ラジオ、エアコン、炊飯器等、様々な製品をミャンマーで製造していたのです。
経済制裁を機に一時は撤退しましたが、故・松下幸之助氏の水道哲学「電化製品の普及によって世界の人々を豊かにしていきたい」という思いは50年以上も前からミャンマーの地で実践されてきていたのです。
 我々パナソニックミャンマー支店が目指しているのは、ヤンゴン・マンダレーに住む富裕層をターゲットとした製品の販売だけでなく、パナソニック製品を通して、地方に住む一般的な人々の生活を、豊かにしていくことです。
 その一例がミャンマーの無電化村のために新たに開発した「ソーラーストレージ」です。製品の開発だけでなく、マイクロファイナンスと連携して、地方の農家やまだまだ現金収入が少ない方々でも購入できるよう初期投資を抑えられる仕組みづくりも行っています。

 パナソニックの看板を背負って活躍してきた先輩方の哲学を受け継ぎ、新たな時代のミャンマーの発展に貢献していきます。


パナソニックアジアパシフィック Panasonic Asia Pacific Pte.Ltd.
事業内容:不動産・建設・オフィス
URL: http://www.panasonic.com/mm

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