2017年6月22日
―ミャンマーの金融業界を取り巻く状況について教えて下さい。
金融業界は近年大きな成長を果たしてはいますが、ミャンマーの経済成長を後押しするだけの金融機能はまだ十分発揮されていません。過去の銀行危機等の影響により、金融機関に対する国民の信頼性は低く、銀行への預金では無く、現金や金等により保有する状況が長く続いてきました。1990年代前半より民間銀行の参入が相次ぎましたが、銀行口座保有率は依然10%強に留まっています。
金融機能の長期的な発展の為には、金融機関への信頼性向上に向けて、地道に金融機関の信用・利便性を高めていくことが重要かと思います。また、企業に対する金融サービスという意味でも、担保主義が依然色濃く、資金循環の活性化にはなお時間を要する状況と言えます。外資系銀行が有す海外での知見により、当地の民間金融機関の人材育成や技術強化に繋げ、幅広い金融サービスを提供していく環境を整えていくことが求められます。
―資金調達を希望する企業の視点から銀行の活用状況はいかがでしょうか。
金融業界の規制緩和が遅れている点の一つとして金利が挙げられます。
預金金利の下限を8%とする一方、貸付金利の上限を13%として定めていますが、この利率は2012年から変わっていません。
外資系銀行も参画した金融市場の組成及び発展する中で、指標性ある金利の形成と定着化により市場金利水準が根付き、より企業ニーズに合った融資が実現されると考えられます。
また、ミャンマーの企業は財務諸表が整備されていない例が多く見られますが、企業の側も正しい財務諸表を整備することで、透明性・開示性向上から円滑な資金調達や、海外企業とのパートナーシップが進むというインセンティブを感じていくことになるかと思います。銀行業界として、企業の側にそのような意識を醸成していくことが重要かと思います。
―外資系銀行の現在の活動状況は如何でしょうか。
現在、10カ国13行に対して外資系銀行の支店ライセンスが与えられており、各国の進出企業の資本金運用やクロスボーダーの決済取引において外資系銀行が重要な役割を担うようになってきました。また、当地における現地通貨建ての取引を行う進出企業においては、チャットの資金調達需要も高く、そうした企業に対する現地通貨建ての貸付も行っています。
一方、外資系銀行に対しては制限も多いのが実情です。支店は一つに限定され、ミャンマー人・外国人問わず個人取引は出来ず、またミャンマー企業との取引も認められていません。
―三菱東京UFJ銀行のミャンマーにおけるこれまでの歴史と現在の活動状況について教えて下さい。
前身の横浜正金銀行としては1918年に進出しました。
戦後、1954年に事務所を開設し1984年に一時閉鎖しましたが、1995年に駐在員事務所として再開し、2011年まではダッカ事務所との兼務が続きました。
外資系銀行誘致の兆しが見られたことから、2012年より専任者が常駐し、2013年に事務所から出張所への転換及び現地民間銀行であるコーポラティブ銀行との提携に至りました。
2014年10月には支店ライセンスを付与され、外資系銀行初の支店開設を2015年4月に果たすことが出来ました。
現在の活動状況については、外資企業向けに、融資、預金、国内外送金、外国為替等フルバンキングの金融サービスを提供しています。
外資系銀行が認可されていない領域については、提携銀行であり、また、弊行出向者も派遣しているコーポラティブ銀行が金融サービスを提供する一方、同行も海外へのアクセスにおいて当行のネットワークを活用しており、相互補完関係を築いているといえます。
―提携銀行としてコーポラティブ銀行を選ばれた背景は何でしょうか。
ミャンマー銀行業界の中で上位の規模に位置付けていることに加え、透明性が高いことを重視しました。また同行はATMを最初に展開し始めた銀行でもあり、金融業界において益々重要性が高まるIT化へ積極的な取り組みを行っているという事も重要な点として挙げられます。
―木村支店長ご自身のミャンマーへの関わりについて教えて下さい。また、初めてミャンマーに来られてから今日までに、ミャンマーの銀行業界における変化として感じられる点は何でしょうか。
2015年4月の支店開業に先立ち、同年の3月に日本の勤務を離れミャンマーに赴任しました。過去にはシンガポール、中国の上海、インドのニューデリーと3カ国の海外赴任を経験しており、ミャンマーで4カ国目となります。成長する当時の新興国での業務経験を、このミャンマーで活かせると期待しています。
またこの約2年間における変化としては、外資系銀行の参入に伴い、当局である中央銀行と民間銀行とのコミュニケーションが良い意味でより緊密化した点が挙げられます。経済成長を後押しする金融機能の発展のために、中央銀行に引き続き建言していきたいと思います。
―最後にこのミャンマーにおいて成し遂げたい目標などあれば聞かせて下さい。
ミャンマーの経済発展を支える金融基盤(インフラストラクチャー)を構築していくことに貢献していきたいと思います。進出されている日系企業の当地における活動を支援することはもちろん、ミャンマー企業が今後グローバルな展開を果たしていく中でも、当行を選択・活用して頂けるような礎を築いていければと思います。