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業界別インタビュー

2017年6月29日

経済発展を支える取引所を作る

金融・保険

ヤンゴン証券取引所
エグゼクティブシニアマネージャー: テットトゥンウー  U Thet Htun Oo
経済発展を支える取引所を作る
ミャンマー初の証券取引所にて、上場企業と投資家との橋渡しに尽力しているのがヤンゴン証券取引所のエグゼクティブシニアマネージャーであるテットトゥンウー氏だ。1996年よりミャンマー証券取引センターにて準備にあたり20年の準備の歳月を費やし、2016年3月取引所の開業が実現された。(取材日/2016年11月22日)

- ヤンゴン証券取引所の生い立ちと現在の活動状況を教えてください。

ミャンマーでは2011年のテインセイン政権発足以降、急ピッチで資本市場開発の準備が進み、2013年7月に証券取引法が施行、同法の施行規則が2014年7月に、また証券取引委員会が同年8月に設立されました。2015年12月にヤンゴン証券取引所の開所セレモニーが行われましたが、当時はまだ上場企業は無く、2016年3月に初めてファーストミャンマーインベストメント(FMI社)が上場を果たし、取引所として稼動することになりました。その2ヵ月後の5月にはティラワの工業団地の合弁会社を保有するミャンマーティラワSEZホールディングスが、8月にはミャンマー市民銀行がそれぞれ上場し、2016年11月現在3社の上場を実現するに至っています。ヤンゴン証券取引所は、日本企業との合弁会社であり、ミャンマー経済銀行が過半数である51%を保有する一方、大和総研が30.25%、日本取引所グループが18.75%を保有しており、取引所運営については日本の知見が多いに活かされています。

—ヤンゴン証券取引所は、上場企業と投資家の橋渡しをする役割かと思いますが、取引所に対する上場候補企業や投資家の関心は如何ですか。

現在ミャンマーには、約250社の公開企業(Public Company)があります。このうち、ヤンゴン証券取引所が規定する上場基準を満たす企業は10社から20社程度です。いずれの会社も上場意向があるものと聞いています。また、投資家については現在5社の証券会社を通じて25,000程の証券口座が開設されています。上場候補企業、投資家のいずれも当初の想定を上回る水準です。決して満足して良い水準ではありませんが、今後の大きな成長が期待されます。


—テットトゥンウーさんご自身についてお聞かせ下さい。どのような経緯で取引所の開設に携わるようになられたのですか。

大学卒業後は、会計検査院で2年半、その後計画財務省で4年間、ミャンマー経済銀行で4年間それぞれ勤務し、ミャンマー証券取引センターに1996年に出向になりました。2015年にヤンゴン証券取引所に異動するまでの19年間をミャンマー証券取引センターで過ごしたことになります。ヤンゴン証券取引所では、現在管理部門を管轄しています。


—取引所開設までには様々な困難があったかと思います。最も大きな困難は何でしたでしょうか。

1996年にミャンマー証券取引センターが設立され、資本市場開発のプロジェクトは華々しくスタートしました。当時は政府との合弁会社や新興ミャンマー企業も多く存在していました。しかし、1997年の通貨危機、2003年の銀行危機、また2008年の世界的な金融危機を通じて、プロジェクトは計画通りには進みませんでした。但し、この間、プロジェクトとしての進展は無かったものの、資本市場について関係者が学習をする良い期間にはなりました。限られた枠組みの中ではあったものの、知識を蓄えることが出来ました。今ミャンマーの資本市場が抱える最大の困難は人材不足だと思います。上場しようとする企業にも証券会社にも、業界の知識を持った人材がいません。如何に人材育成を行っていくかが大きな課題です。


—資本市場を一層活発化していく為に必要なことは何でしょうか。

上場企業については、透明性を高めていくことが重要です。また事業計画を適切に作成していくことも強く求められています。投資家については、株式投資に対する知識を身に付けていく為の教育活動が重要でしょう。政府について言えば、優遇税制の導入などにより上場企業への支援をより強めていくことが重要と考えています。


—外国人が証券取引へ参加出来る見通しについては如何ですか。

現在は外国人の市場株式への投資は認められていませんが、市場発展の為には外国人の参加は重要だと考えています。現在会社法の改正が進められており、外国人がどの程度の割合まで保有することが認められうるかは議論の最中でありますが、会社法の改正に合わせて取引所もルールを策定していくことになろうかと思います。


—最後にどのような取引所を目指していきたいかをお聞かせ下さい。

 今後のミャンマー経済を支える取引所にしていきたいと思います。ミャンマーの経済発展の為には、企業活動における資金調達が不可欠です。ミャンマーの企業が活用しやすい取引所を作ることで、ミャンマーの経済に貢献していけるものと考えています。



ヤンゴン証券取引所
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