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業界別インタビュー

2017年6月29日

自動車市場は、今後5年内で10〜11万台に達する

製造・小売

エダラン・タンチョン・モーター
シニア・リージョナル・ダイレクター: アンボンベン Ang Bon Beng
自動車市場は、今後5年内で10〜11万台に達する
ミャンマーの道路を見渡せば、そのほとんどが日本から輸入されてきた中古車だ。新車が走る姿を見掛けることは極めて少ない。そんなミャンマーにおいて、日産ブランドを広めるべく、製造から販売までを一手に引き受けるのがタンチョンモーターだ。自動車市場の現状とポテンシャルを中心にタンチョングループのアンボンベン氏から話を聞いた。(取材/2017年2月)
ミャンマーにおいて日産ブランドを広める

—ミャンマーでの事業展開はいつから?事業内容は?

 2013年7月、ミャンマーにおいて「日産ブランド」を広め、完成車の製造に関する独占契約を結びました。その後、8月にはミャンマー投資委員会からバゴーの工業団地における自動車の製造・販売に関する認可を受けています。2015年11月には、ミャンマーにおける日産の自動車の製造・組立・販売を行う権利に関して、独占契約を結びました。あわせて、タンチョンモーターは、販売店とディーラーを任命する権利も取得しており、日産車のアフターササービスを提供するための独占契約を結んでいます。

 タンチョングループとしては、ミャンマーにおける日産のビジネスを全面展開しています。日産自動車から、ミャンマーにおいて、「自動車の製造・組立・輸入」「日産車の流通」「販売後のアフターサービスの供給」を行う権利を付与されています。日産自動車に関する事業を展開する一方で、日産ブランド以外の全ての自動車にもアフターサービスを提供し、製造設備のセットアップも事業として展開しています。自動車に関連する事業を拡大していきます。

ダイナミックな新興市場になっていく可能性を秘めている

— なぜミャンマーの地を?

 インドシナ地域において、自動車市場は凄まじいスピードで成長し続けています。ミャンマーでの事業展開においては、我々のこれまでのインドシナにおける経験が役立つと考えています。弊社は、ラオス、カンボジア、ベトナムにおいても、存在感を発揮しており、その相乗効果についても期待しています。

 現在ミャンマーでは、自動車の95〜98%を「右ハンドルの日本の中古車」が占めています。市場全体を見ても、左ハンドルの新車は、例えばこの5年で5,000〜10,000台程度と、相対的にみて、かなり小さな割合です。また車の所有率を見ても、1,000人に7台と、かなり低い水準です。しかし、ミャンマーは、5,200万人の人口を抱え、豊富な天然資源があり、GDPは成長し続けており、経済成長を強く後押しする政府の存在もあります。よって、ミャンマーはダイナミックな新興市場になっていく大きな可能性を秘めています。したがって、少しでも早いタイミングで「日産ブランド」が地元の人々から「信頼できるブランド」として認知されることは極めて大きな意味を持ちます。よって、早い段階から、ミャンマーの市場で足場を固めることが重要だと考えています。

自動車市場は、今後5年内で10〜11万台に達する

— 業界環境は?将来のポテンシャルは?

 我々は、新車・中古車あわせた市場全体の規模は今後5年以内に10〜11万台に達すると予測しています。今後10年の軸で見れば、市場規模は15万台以上に膨らむことを期待しており、そのうち約10%かそれ以上が新車販売となる、と見ています。例えば、中古車に関する制限や政府方針、インフラの整備・発展状況等といった多くの要因が市場全体の成長に影響を及ぼすことになるでしょう。

 市場ニーズにあった様々なモデルラインナップを揃えています。例えば、アルティマ(セダン)、ナバラ(ピックアップトラック)、エクストレイル(SUV)、アーバン(バン ※日本ではキャラバン)、シビリアン(マイクロバス)などがあります。2017年1月に、我々はミャンマーにおいて、初めての現地組立モデルの新しい日産サニー(セダン)を発表しました。セダン車は、乗用車市場においては最も市場が大きいため、日産サニーの発売により、我々の市場シェアが大きく改善することを確信しています。また将来的な市場成長を睨み、信頼されるブランドづくりに力を入れています。例えば、日産とタンチョンで協力し、魅力的なモデルラインナップを揃え、高品質のアフターサービスを提供する。加えて、素晴らしい顧客サービスをお届けし、広範な地域をカバーすべく販売代理店網を広げていくなど、今後も取り組んでいきます。

中古車の台数が減っていく3年後を睨んだ柔軟な製造戦略

—課題はありますか?

 我々は、ミャンマー政府が自動車政策を実践的かつオープンで参入しやすいものにしようとしている、と理解しています。タンチョングループとしては、今後、いくつか運営上の問題に直面するかもしれませんが、政府の方向性を支援し、適合し、調整していくつもりです。現状のミャンマーでは95〜98%が中古車に占められており、市場全体における新車の割合は著しく低い状況です。しかし、時間をかけて中古車輸入にも制限がかかっていくでしょうし、中古車の台数自体は減っていくと確信しています。

 ミャンマーの道路を見れば、右ハンドルの車がほとんどですが、交通システムは、左ハンドルを前提として設計されています。右ハンドル車から左ハンドル車への遷移には時間が掛かるでしょう。しかし、政府の明確な方針の下、徐々にこの問題も解決されていくでしょう。

—次の一手は?

 現状、新車市場は低位な状況にあるため、柔軟な製造戦略を執っていく方針です。ラインタヤ地区の工場の小さな製造ラインから製造を開始し、3年後には生産台数を増やす計画で、バゴーの新工場へ移転するつもりです。「ミャンマーの自動車市場において、重要なプレーヤーになる」という我々の目標達成に向けて、販売代理店ネットワークを拡げていきます。同時に、徐々に市場シェアを拡大するため、モデルラインナップも増やしていきます。


エダラン・タンチョン・モーター
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