ミャンマーに進出する日系企業のための
B2Bガイドブック WEB版

業界別インタビュー

2017年6月29日

求職者・企業間のベストマッチングを実現するために

HR・人材育成

ワークドットコム Work.com
マネージングディレクター: バート・ヴァンディジック Bart Van Dijik
求職者・企業間のベストマッチングを実現するために
急激な市場変化に直面するミャンマーでは、優秀な人材の獲得競争が激化している。オンライン上で15万人を超える求職者と7,000を超える企業をつなぐ役割を担っているのがドイツ企業を母体とするワークドットコムだ。同社は、デジタルソリューションを通じて企業の採用活動のあり方までも変えようとしている。「ミスマッチをなくし、ベストマッチングを実現したい。」と語る同社のバート・ヴァンディック氏に話を聞いた。(取材日/2017年2月)
求職者と企業を繋ぐウェブサイト運営

—人材に関する仕事です。事業内容の詳細を詳しく聞かせてください。

 求職者と企業をつなぐマッチングウェブサイトを運営しています。母体はドイツのロケットインターネット社で、アフリカ6ヶ国・アジア4ヶ国の10ヶ国で事業を展開しています。ミャンマーでは2012年6月頃からサービスを開始し、現在はWork.comを含めた6つのサービスを展開しています。当時は、インターネットも一般に広がる前であり、著名な競合サービスもない状況でしたので、チャンスがあると見込んでサービスを開始しました。このため、よって、Work.comはミャンマーにおいて、最も早い段階からサービスを提供するキャリア系ウェブサイトです。

弊社サービスを利用すれば、求職者は新聞よりも簡単に希望の仕事を探すことができます。また通勤時間等の空き時間に、いつでも仕事を探して応募できます。また自身が登録した履歴書を見た企業から、オファーを受けることも可能になります。

 企業側もウェブを利用して求職者を探すことで、事務量が削減できます。サービスは3種類のプランを取り揃えています。プランによって履歴書の閲覧数やサービス内容が異なるため、企業規模や採用ニーズに応じて選択いただけます。最安料金プランは15万チャットからあり、3ヶ月に履歴書30枚の閲覧と6案件の投稿が可能です。ちなみに履歴書閲覧数、投稿数がさらに多く、ウェブ掲載時には担当スタッフからアドバイスやフォローが受けられるプランが1番人気です。また、通年で採用ニーズがある大企業向けには、弊社メディアに加えて、SNSや提携先メディアを通じた宣伝が可能なプランも設けています。ウェブサイト内では、求職者向け、人事担当マネージャー向けの情報も発信しています。

デジタルソリューションが変化の一端を担う

—ミャンマーの労働市場環境を聞かせてください。

 オンライン上で求職者と企業をマッチングする新しい取り組みは、着実に広がり、一般化しつつあります。人材紹介会社でも求職者集めのために、ウェブサイトに力を入れはじめています。今のミャンマーの環境とデジタルソリューションの組み合わせの成せる技です。現在、弊社はミャンマー最多15万人強の人材の履歴書データベースを保有しています。登録者は19歳〜30歳の若者が中心です。年齢的なものもあり、新入社員〜中間層が中心で、役員クラス等の案件はそれほど多くありません。 オンラインという、従来の求職/採用活動とは異なる新しいスタイルにも関わらず、少なくとも、のべ7,000企業を超える企業にサービスを利用いただいています。現時点でも400企業がアクティブな状態です。日系企業含め、外資系企業とも取引実績は多数ありますが、顧客の85%近くがミャンマー企業です。市場全体を見れば一目瞭然で、外資系企業の数は限られています。よって、我々のターゲットはミャンマーの人たちであり、英語とミャンマー語で見られるようサイトを構成しています。
 
 募集している業種は、人事、総務、会計、営業、エンジニア等の事務系の案件が中心ですが、ドライバーやサービス業のスタッフなど多岐に渡ります。エリア的にはミャンマー全土が対象ですが、案件が多いヤンゴンやマンダレーがほとんどです。今後は、通信環境が改善することで、他のエリアにも広がっていくでしょう。最近では、海外生活経験のある人材や海外留学帰りの人材を採用したい、とのニーズも増えています。高い経済成長率を誇るミャンマーには数多くのチャンスが溢れているため、母国に戻ってきて働こう、と考える人の登録も増えています。比較的若い方の利用が中心ですので、今後もニーズは広がり続けていくでしょう。弊社ウェブサイトは、市場全体のほんの一部に過ぎません。しかし、デジタルソリューションは大きな変化の一端を担っていますし、未来は明るいと感じています。

オンライン、オフラインを通じてミスマッチを無くす

—課題に感じていることは。

 求職者と企業間のベストマッチングの実現をすべくサービスを提供しており、ミスマッチを無くす事が最大の課題です。ミスマッチの原因の1つは相互理解の欠如にあります。例えば、求められた業務に対する求職者のスキル不足や、企業側があれもこれも求め過ぎるなどのケースが挙げられます。相互理解を高めるため、弊社ではオンライン・オフラインの両面から教育に取り組んでいます。例えば、求職者の課題では「面接に来ない」こともしばしば起きています。そうした事態を防ぐためにも教育に取り組んでいます。ウェブサイトでは、履歴書の正しい書き方、面接前に準備すべきことに加えて、面接開始時間に遅れる場合の対応に関しても情報を提供しています。ミャンマーで一般に流通している履歴書フォーマットでは不十分なため、詳細な履歴書の書き方も指導しています。これまで履歴書を書いた経験がない人でも理解できるような情報発信を心掛けています。

 ウェブとは別に地方大学に出向き、寄付講座として「履歴書ワークショップ」も開催しました。仕事の探し方にはじまり、魅力的な履歴書の作り方、企業から求められるスキルは何か等、就職に関する情報やヒントを直接提供しました。オンライン・オフラインの両面から、求職者に対して教育を提供しています。

 企業の人事担当者は、求職者と企業を繋げる重要な役割を担っているため、人事担当マネージャーとの関係構築は我々の事業において大きな鍵を握ります。関係構築と共に、人事担当者向けの教育も必要と考えて取り組んでいます。人事担当者の仕事業務遂行にあたって必要な情報を提供すると共に、よりよい決断をしやすくするため下すための支援を行なっています。例えば、職務内容をわかりやすく記載するためのポイントや、募集中ポジションの給料水準に関するアドバイスも行っています。具体的には、似たような条件で求められる給料水準や、特定条件の下で人材を探した際に集まる人数の目安等についてアドバイスを行なっています。職務内容についても、あれもこれも、と欲張る傾向が強いため多くとも5つ以内に絞るよう、アドバイスもしています。ミャンマーでビジネスをする以上、現在の労働市場が置かれた環境を受け容れなければなりません。特に外資系企業は、他国と同水準を求めがちですが、国の教育レベルやスキルセットの違いを受け容れた上で採用活動に取り組む姿勢が必要です。

 求職者・企業双方がマッチングに集中できる場を提供しよう、と2017年1月には初の試みとしてペーパーレス・ジョブフェアを開催しました。参加者は事前登録することで、当日は手ぶらで参加可能。会場では、求職者と企業が直接会話を交わした上で興味があれば、その場で申し込みができる仕組みを導入しました。デジタルソリューショとの組み合わせを通じて、時間・手間・費用の削減が実現し、本来の目的であるマッチングに専念させることができたのではないか、と考えています。

 こうした、オンライン・オフラインにおける教育も通じて両者間のミスマッチを無くし、ベストマッチングの実現に向けて取り組み続けます。教育の効果が表れるまでには長い時間が必要ですし、決して簡単ではありません。求職者と企業がお互いに尊重し合うことも必要です。求職者の教育と企業の人事担当者の教育を通じて、相互理解を深めるサポートをすることでミスマッチを防ぎ、1人でも多くのベストマッチングを実現していきたいと思っています。

市場の急拡大は間違いないベストマッチングの実現に向けて

ー今後の展望は。

 ベストマッチングの実現に向け、弊社の商品をより良いものにグレードアップしていくこと、これに尽きます。既に開発チームも組織し、製品の品質改善に集中するのみです。また弊社は4年以上にわたり、ミャンマーで事業展開する中で、多くの求職者情報と企業の採用に関するデータが集積しています。このデータを元にした分析が可能となります。例えば、月曜の朝に携帯からのアクセスが多い、といった情報も弊社のみが持ち得る情報でしょう。

 「HRインテリジェンス」の名前で、人事担当者に役立つ情報をオンライン上で提供する準備を整えています。弊社が分析した労働市場に関する情報をシェアすることも、大切な役割の1つと考えています。人事担当者を招いてイベントを実施し、直接情報提供する機会も設ける予定です。日系企業の皆さまにも積極的に参加いただきたいと思っています。

 オンラインによって、求職者と企業をマッチングする市場は開かれたばかり。市場にはまだまだ成長の余地があり、急拡大していくことは間違いないでしょう。この魅力的な環境で挑戦できることを幸せに感じています。デジタルソリューションは世の中を変える力があると、心から信じています。デジタルソリューションを通じて、求職者と企業のベストマッチングを実現していきます。


ワークドットコム Work.com
事業内容:
URL: https://www.work.com.mm/

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