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業界別インタビュー

2017年6月29日

こまめな昇進でやる気引き出す

製造・小売

ハニーズガーメントインダストリー
代表取締役 : 井口 猛 Iguchi Takeshi
こまめな昇進でやる気引き出す
 人件費の安さから多くの企業がミャンマーに進出している縫製業。布や糸などの素材を輸入して加工後に再び輸出するCMP(裁断・縫製・包装)方式は税制上の優遇策もあって注目されている。その一方で賃金は上昇傾向で、2015年9月には最低賃金制度が開始。ストライキも頻発するなど工場運営における課題も大きい。2010年にいち早く進出した大手製造小売り(SPA)のハニーズの現地法人、ハニーズガーメントインダストリーの井口猛社長に、縫製工場運営の実情を聞いた。(取材日/2016年11月)
ストライキのない労使関係

—工場では本当に多くの従業員が働いているのですね。昨年9月に最低賃金制度が導入されて賃金が大幅に上昇したと聞いています。また、縫製業を中心に賃上げや職場環境改善のためのストライキも頻発しました。御社の工場ではいかがですか。

 2つの工場で合計3,800人が勤務しています。生産した商品すべてがハニーズの店舗向けになります。生産するだけでなく、ヤンゴンで仕分けも行い、各店舗に直送しています。確かに人件費は上場しており、2015年の最低賃金導入の際に給与が4割も上がり、その後さらに1割程度アップしました。ただ、それでもまだミャンマーの人件費は安いといえます。

 労使関係は良好だと言えるでしょう。大きなストライキは一度もありません。一度ラインの従業員が集団で出勤しなかったことがあったのですが、その時はすぐに幹部を向かわせ、何が問題だったのか聞き取りを行い、出勤するように説得しました。その結果1日で解決しました。このような場合には、迅速に対応することが必要です。人件費はいずれ上がるのですから、従業員との関係を悪化させるよりは、迅速に要求に応じたほうがいいのです。関係がこじれると修復が大変ですから、何週間もストライキで生産が止まるようなことがあれば大きな損失になります。

 給与水準は周辺の職場と比べて厚遇だと思いますが、それだけではなく、快適に仕事ができる職場づくりに力を入れています。例えば、暴力や暴言は厳禁です。従業員が辞める理由には、人間関係によるものが多いのです。また、無茶な残業をさせることもしません。残業が必要な時には強制ではなく、必ず全員に同意を得てから行います。従業員のやる気を引き出すため、こまめに昇進させる新人事制度を導入しました。ワーカーやサブリーダーといった職階ごとに、6つのランクに分け、毎月昇進の査定を行います。優秀な従業員であれば、3か月ごとにランクが上がることもあります。「一年我慢すれば給料が上がる」と言っても、ミャンマー人には通用しません。これにより、従業員が長く勤務してもらえるように促しています。直属の上司が査定を行いますので、マネジメントの上でも役立っているはずです。この制度は今のところ不満もなく、うまくいっていると考えています。

未経験者が多い従業員

—ミャンマーでは、人材の流動性が高いと言われますね。

 弊社でも、毎月7~8%の従業員が辞めていきますね。多い工場では10%くらいと聞いています。ミャンマーの特徴としては、未経験者が多いことですね。未経験者には、トレーニングラインという専用ラインを設け、商品にはならない別の布をミシンで縫う訓練をするのですが、1~2か月たってやっとラインに投入できるかと思うと、辞めてしまうケースが多い。2012年に稼働した第一工場ではやっと定着してきて、ここで育った人材が第二工場の要職についているという形になっています。継続勤務によって生産性を確保することができます。

 周辺国では、労働力の枯渇という問題もありますが、ミャンマーではまだ採用できていますね。ミャンマーの国境省傘下の縫製の職業訓練校からも採用しています。ほとんどの従業員はヤンゴン在住で、第二工場だけでも41 台あるフェリー(通勤用車両)で出勤していますが、地方出身者用の寮も用意しています。

—今後の展望を教えてください。

 そうですね。現在は第二工場の生産を拡大しています。これが安定して運営できるようになれば、敷地内に別の工場を建設することも検討します。また、人材育成も進めたいと思います。中核の幹部は、生え抜きの人材が良いと考えていまして、「自分の会社だ」と思って働く幹部人材が多く育ってほしいと思います。


ハニーズガーメントインダストリー
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