2017年6月28日
―ミャンマー証券取引センターの会社概要について教えてください。
当社は1996年にミャンマー政府との合弁会社として設立されています。ミャンマー経済銀行及び大和証券グループがそれぞれ50%を出資し資本市場創設の為に長らく準備にあたり、2015年にようやく証券会社として正式に認可を受けました。現在の主要業務は、上場株式のブローカレッジ、国債の売買、未上場企業に対する上場アドバイザリーの3つです。
―2016年3月にファーストミャンマーインベストメントが上場し、これまでに3社の上場企業が誕生しています。これら上場企業株式のブローカレッジビジネスの状況は如何でしょうか。
現状では、投資家層が限定されていると言わざるを得ません。外国人投資家は許可されておらず、機関投資家は一部いるものの市場全体の中の存在感は依然低い状態です。全体としては個人富裕層に依存した投資家構造になっています。個人投資家の数としても不十分です。一般的にミャンマーの資産のうち国内の銀行預金として保有されている割合は10%程度と言われており、多くは不動産や金などへの投資資金となっています。それらの資金の一部が株式市場へ流入するだけでも市場は活発化します。また投資家をより多く導く為には、3社の上場銘柄では限界があります。上場企業数の増加と投資家層の拡大はどちらが不足しても成り立たず、同時並行的に進めていく必要があります。
―国債市場については如何でしょうか。
国債市場の特徴として、個人投資家も一部いるものの、銀行や保険会社などの機関投資家が占める割合が圧倒的に大きいのが実情です。例えば、銀行の国債保有を増やす上では、預金量の絶対額が高まる必要があり、その為には銀行システム全体に対する信用をあげていくことが求められます。
―今後の資本市場の発展の為には上場企業数の増加が鍵となりますが、未公開企業に対する上場アドバイザリーの運営状況は如何でしょうか。
上場予定企業に対して、上場のメリットや意義を正しく伝えていく必要があります。上場を通じたレピュテーションの向上や資金調達の可能性についてまだまだ理解が浸透している状況とは言えません。
―現在のミャンマーの証券業界の状況を教えてください。
本ライセンスを取得している証券会社は当社を含めて5社あります。また仮ライセンスを保有する証券会社が5社あり、そのうちの数社は近々本ライセンスを取得する見通しと聞いています。いずれの証券会社も収益機会が限定的な中で、人件費やシステム費等の管理コストが重荷となり収支環境は厳しいものと思います。
資本市場はまだ誕生したばかりでありますので、当面は各社が競争するというよりも、協力して市場全体を拡大させていくことが重要かと思います。
―証券業界発展の為の課題は何でしょうか。
人材育成が最大の課題と言えます。また資本市場が開設されたとは言え、細かい実務的な枠組みは未整備な部分が多く、証券取引委員会やヤンゴン証券取引所を中心に各者が協力し合って、一つ一つのオペレーションを定めていく必要があります。
―高橋社長のミャンマーとの関わりについて教えてください。
学生時代の1987年1月に初めてミャンマーを訪れました。親日で真面目なミャンマー人の国民性に惹かれ、いつかはミャンマーで働きたいと当時から思っていました。大和証券入社後は、債権部や金融法人部等の国内の部門で勤務してきましたが、ミャンマーへの異動の希望を出し続け、2014年10月に念願叶って赴任が実現しました。
―初めて訪れた時から既に30年近くの時日が流れていますが、当時との比較で現在のヤンゴンはどのように映りますでしょうか。
当時は熱烈な親日と感じました。今日でも親日ではありますが和らいだ感があります。思い出されるのは、長距離列車に乗っていた際に、周囲の人が食べ物や飲み物を差し出してきて、その理由を聞くと、ミャンマー独立前に自分達は大変日本にお世話になったので、そのお礼がしたい、と言われたことがありました。とても印象的な出来事です。
―ミャンマー証券取引センターはミャンマー政府との合弁会社ですが、合弁会社としての難しさもあるのではないでしょうか。また今後同社をどのように導いていかれたいとお考えでしょうか。
確かに政府との合弁会社という性質上、ミャンマー政府の意向を踏まえながら、また同時に大和証券としての方針を適格に伝えていく必要があります。一筋縄ではいかないプロセスです。当社はミャンマーの証券会社で唯一日系の資本が入った証券会社であり、日本で培った知見を活かし、ミャンマーの企業及び投資家から最も愛される証券会社にしていきたいと思います。