2017年6月28日
―JCBの海外における事業活動、特にミャンマーにおける活動状況について教えてください。
JCBは日本では、カードの発行、加盟店の開拓、またデータ処理等を全て自前で行っていますが、海外では各国の金融機関と提携し、JCBブランドのカードを発行して頂くというライセンスモデルで運営しています。この度ミャンマーにおいては、2016年8月に現地民間銀行のエーヤワディ銀行(AYA銀行)との提携により、ビザやマスターに先駆けてJCBのライセンスを付与したクレジットカード及びデビットカードを発行することが出来ました。2016年12月からはコーポラティブ銀行(CB銀行)でも発行が始まっています。
―AYA銀行との提携の内容を教えてください。またこれまでの発行状況についてどのように評価されておりますでしょうか.
AYA銀行の顧客向けに、デビットカード及びクレジットカードを発行しています。クレジットカードについては、サービスの内容等に応じて、プラチナ、ゴールド、スタンダードの3段階を設けていますが、このうち最上位のプラチナカードの発行が当初想定以上に伸びています。AYA銀行の富裕層顧客が興味を示しているためです。
実際にカードを見て頂くと分かりやすいですが、AYA銀行が発行したカードには、JCBとミャンマーペイメントユニオン(MPU)の二つのロゴが入っている共同ブランドでの発行となっています。カードがミャンマー国内で活用される場合は、MPUのネットワークで、一方ミャンマー国外やオンライン決済で使用される場合にはJCBのネットワークを活用しています。
―ミャンマーの場合、MPUが金融決済上の大きな役割を担っていると聞きますが、その位置付けをご説明ください。
ミャンマーでは、2011年にミャンマー中央銀行が主導し、国内決済を担う機関としてMPUを設立しました。MPUにはミャンマーの銀行23行が加盟しており、この内、ATMや決済端末を保有する実質17行においてMPUカードを使用することが出来ます。JCBは2012年にMPUと提携し、MPUに加盟する全ての銀行とネットワークを繋ぐことが出来るようになり、ミャンマーにある全てのATMでJCBのカードで現金の引出しが可能となっています。
―国際的に広く普及しているビザやマスターカードにJCBが先行している要因は何でしょうか。
ビザやマスターカードは、MPUのプラットフォームを認める立場をとっておらず、ミャンマー国内においても自社のシステムを活用することを前提に考えているようです。その為、ミャンマーの個別銀行と直接提携関係を結ぶことを進めているようですが、ミャンマー中央銀行は、あくまでもMPUの仕組みの採用を推進しており、このため、ビザやマスターカードはクレジットカードおよびデビットカードの発行が現状許されていません。
――今後のカード発行枚数の増加についてはどのように見通されていますでしょうか。また、現在は、ミャンマー国内でカードが発行できるのはミャンマー人に対してのみのようですが、外国人にが発行される見通しは如何でしょうか。
現在ミャンマーでは、銀行口座の保有率が5から7%程度と言われています。今後企業で勤務する人が増えていく中で、給与の支払いの為の銀行口座の開設、またその給与をATMで引き出す為のデビットカードの発行が増えていくものと想定されます。外国人及び法人のカード発行も近々認められるようになる見通しです。
―ミャンマーではこれまで現金決済が主流でありましたが、今後カード決済に切り替わっていくのでしょうか。
確かに金融システムに対する不安等もあって、現金決済が長く続いてきました。2000年代の初旬、一部の現地銀行が自前でクレジットカードを発行しましたが、2003年の金融危機に伴い発行停止を余儀なくされました。また、カードの普及には、電気や通信という社会インフラの整備が不可欠です。これまでそうした下地も整っていませんでした。
JCBカードについては、1997年にミャンマーで初めて使えるようになりましたが、MPUとの提携が実現する2012年までは、オフラインベースでの決済となっており、レストランなどで使える決済端末やATMで使えるようになったのは2013年からです。MPUのネットワークにより使える決済端末設置台数は現在7,000程度、またATMは2,500台程度、まだまだ十分ではありませんが、今後大きく成長する可能性を感じています。
―松下カントリー・マネジャーのミャンマーへの関わりを教えてください。
1998年にJCBに入社し、マイレージカードや人事等に関わっていましたが、2003年に国際部門に移り、アジア地域の営業支援等に関わる中で2008年から2010年まではシンガポールに赴任していました。東京への帰任後は、インドやバングラデッシュ等の海外拠点の無い国を担当していましたが、その中でミャンマーへの関心が高まり、MPUの誕生と市場拡大の可能性からミャンマー担当として隣国タイに2013年9月に赴任し、2016年6月のヤンゴンでの支店開設に伴ってヤンゴンに駐在することになりました。
―最後に今後の目標について教えてください。
ミャンマーは、カード発行において、JCBがビザやマスターカードに先行する唯一の国と言っても過言でありません。ひとりでも多くのミャンマーの方々にJCBカードをお持ちいただき、ミャンマーにJCB有り、というブランドを築いていきたいと思います。今後、現地銀行との提携を加速し、他の銀行でもJCBブランドのカード発行を進めていきます。JCBカードを通じて、ミャンマーにおいて決済利便性を向上させ、カードで支払うという文化を根付かしていければと考えています。