2017年6月28日
―ミャンマー進出企業を中心に、人材や不動産まで含めた幅広い分野のコンサルティングを行っていますが、特にどんな分野に力を入れているのですか。
投資認可の手続き代行などの進出コンサルはもちろんですが、戦略的な助言もしています。
例えば、社員のうち、どんな人材を駐在員にすればよいのかといった点です。3人も送りこめるような大企業であればともかく、中小企業はそうはいきません。
日本の会社は工場の運営のために経理などの人材を駐在させようとするのですが、それに対して「経理はアウトソーシングすることもできるので、労務管理や生産管理に長けた人材のほうがよい」というような助言をします。
ミャンマーの採用に関しては、人材の紹介はしていないのですが、面接の代行をしています。わざわざ日本から採用活動のために何日も出張するのは無駄ですから、私が面接をして、これはという人材を絞り込んだうえで、最終面接をしてもらいます。
進出企業の要望があったため、オフィスや住居の仲介もしています。自分の目で見てよいと思えるものしか紹介しません。中でも重要なのは大家の人柄です。こちらの住宅は必ず何かしらトラブルがあるので、その場合にきちんと対応してくれるかどうかを見極めています。
―ミャンマーの投資環境は目まぐるしく変わっています。注意するべきことは何ですか。
そうですね。例えば法律の面では、ミャンマーの法制度では法律、通達、行政指導という三点セットで構成されています。行政指導などは窓口の担当者ごとに全く違うことを言われるので、条文をいくら読み込んだところで意味はありません。
実際にやってみないとわからない部分がありますが、実績を積んでいくとだんだん見えてくるものがあります。そのため弁護士やコンサルタントでも、実務をやったことのない人にはわからないことがあります。どれだけ過去の事例を知っているかがカギで、経験のある人はよい仕事ができ、ますます磨きがかかるようになります。どんな人にそのような経験があるかは、もう評判で判断するしかないでしょうね。
―クライアントに辛口のアドバイスをすると言われています。
そうですね。例えば、自動車の輸入などは5年前から「もう遅いですよ」とアドバイスをしています。コンドミニアム法の成立を受けて不動産投資をしたいという人も相談に来るのですが「そんなに高いものを買うのなら、自分で建てたほうが安いですよ」と話します。
―ミャンマーの投資環境についてどう見ていますか。
統計に表れない経済活動があることに注意しなければいけません。ミャンマー人は銀行を信用せず、タンス預金をするため、統計よりも高い購買力があると考えるべきです。よく一人当たり国内総生産(GDP)が1,000ドルを超えるとオートバイが売れ、3,000ドルを超えると自動車が売れると言われています。ヤンゴンでの自動車の売れ行きを見ていますと、3,000ドルは優に超えていると思います。海外への出稼ぎ労働者が帰国しているほか、外資系企業に勤めるホワイトカラーが出現していて、都市部の購買力を押し上げていると思われます。
汚職度の調査で世界の下から何番目だと言われることがありますが、世界各国で仕事をした経験がある私からすると「なんて清潔な国なのだ」と思います。
あんなのはミャンマーで仕事をしたこともない欧米人が書いた悪意のあるレポートだと思います。
シンガポールのリークアンユー元首相が若き日にヤンゴン大学(旧ラングーン大学)の入試に失敗して英国に留学し、その後ヤンゴンを参考にシンガポールの都市計画を作ったとされる逸話でもわかる通り、以前のミャンマーは発展した国でした。そのため、ミャンマー人はとても民度が高いのです。ミャンマーのポテンシャリティは非常に高いと言えます。