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業界別インタビュー

2017年6月28日

One Team No Boarderで顧客の多国間会計ニーズに対応

法務・税務・会計

エスシーエス国際会計事務所 SCS GLOBAL CONSULING MYANMAR LTD
マネージングディレクター: 洞 大輔
One Team No Boarderで顧客の多国間会計ニーズに対応
社員数が少ないフェーズの駐在員が対応しなければならない業務は本当に多岐に渡る。その中でも誰もが口を揃えて苦労を語る分野、それは会計だ。進出前の提携先探しからデューデリジェンス、進出決定後の登記・設立業務、進出後の毎月の記帳代行や、法人税や個人所得税の税務申告代行といった会計税務、提携ファームと連携した監査業務、各種コンサルティングまで一貫してワンストップで提供しているエスシーエス国際会計事務所の洞氏に話しを聞いた。(取材日/2016年11月)
税務ルールの厳格な適用が開始され、正しい道への過渡期へ

―ミャンマー税務の分野で、いまの市場環境や今後の将来性はどうお考えですか。

税務については、今まではルールが税務署毎や担当者毎に徹底がされておらず、徴税能力としても決して高いとは言えない状況でした。しかし最近では徐々にではありますが、ルールに従って徴税しようというスタンスが随所にみられるようになってきました。
その中で理論的な徴税が行われば、ビジネスのしやすさは推進されると期待はしていますが、今は他先進国と比較すればまだまだ途上の段階。過渡期と言えると思います。間違った徴税意識を持つ担当官も居て、理屈が通らない強引な徴税をしてくるケースもあり、ここ1~2年は税務官との折衝に苦労しています。
また、新しい制度や仕組みを突然発表する事もあるのですが、参考にした他国の例をそのまま適用しようとして、現場では矛盾が生じているケースも見られ、注意が必要です。
例えば、商業税支払いにおける還付制度が2016年4月から始まりましたが、還付の仕組みや業務フローが明確には確立されておらず、想定通りに還付されるかは疑わしいと言われています。
また印紙税についても、それまでの商慣習上、支払っているケースは皆無という状況から突然、2016年1月下旬に3月末までにまでに納付しなければ、最大10倍の過怠金を課すとの発表があり、日系企業をはじめとする外資企業も対応に追われました。今後、徴税強化は間違いなく、法人税を含むあらゆる税において、毎年しっかり徴税されていく形になるでしょう。
2017年4月決算からはイータックス(ネット上での税務申告)の推進も視野に入れているという話しもあります。
他国からは間違いなく遅れてはいますが、一方で、それだけ多くの参考事例がまわりにあるとも言えます。周辺国が何十年もかけて積み上げてきた税制度を、うまく取り入れいれれば、数年で他国並みの税務体制を構築できるかもしれません。

日本基準の経理担当者に巡り合うのはかなり困難

―日系企業が一番困っていることは何ですか

社内の経理分の体制構築に非常に苦労されているお客様が多いです。
なぜなら、ミャンマーには正しい実務経験を積んでいる人材が圧倒的に少ない上、国際的には通用しない「ミャンマー実務」の熟練者も多い中、経理経験のない日本人駐在員が優秀な人材を選び分けることは極めて難しいからです。
駐在員はビジネスの立ち上げに奔走しながら、「資格も経験もある」というローカルの経理担当者を採用し、実務を任せていた結果、親会社への報告はおろか、自身も正しい数字を把握できないという事態に陥るケースは珍しくありません。各部門が適切な専門性を持ち、業務を遂行している日本の親会社からすると、想像しがたい状態からなのか、本社の協力体制はほぼ無いケースも多く、ひとりの駐在員に広範な業務遂行が求められるのが現状です。

―アドバイスはありますか

のちの苦労を考えるなら、事前に現地人材の特徴や金融インフラの発達度合を理解し、立ち上げ期は少なくとも日本親会社の経理部から3~6カ月の短期出張の形でも、中堅レベルの経理担当者の計画的な関与が望ましいです。
 社内リソースでは限界がある場合は、地場や日系の会計事務所の専門家を利用するのも方法の一つと考えます。ただし、あくまでも外部者であるので、専門家を利用すれば、日本の本社や現地駐在員が経理について全く関与しないでよいということではなく、適切な管理監督責任を遂行するべきということは言うまでもありません。
 さらに言えば、年度のできるだけ早いうちに、ミャンマー子会社の決算だけでなく、その後の企業グループ全体の財務諸表作成を想定し、連結財務諸表の基礎知識のもと、連結パッケージ対応(端的に言えば、自社(連結子会社)の決算情報を親会社指定のフォーマット(連結パッケージ)に入力し報告すること)を確立しておく必要があります。

One Team No Boarder ~国を超えたサービス展開へ~

―御社の今後の展開を教えてください。
ミャンマー事務所としては、経済制裁解除をうけ、欧米系企業の増加も見込まれますので、日系企業に依存しない顧客構造の構築に着手していきたいと考えています。
またSCS本体としては、東南アジア各国に拠点を置く会社も増える中、お客様の所属、国を超え、横串を刺したようなサービスの拡充を強化して行きたいと考えております。

―洞さん個人の思いをお聞かせください。

外国人がつくったから利益主義の一時的考え方で運営されているような会社ではなく、ミャンマーにしっかりと根付き、永遠に続く会社を残したいと考えています。従業員が愛着を持ち、自身の想いで能動的に組織を育ててくれるような会社作りを目指しています。
もうひとつは、税務署、税務官のレベルアップを実現したいです。なぜなら会計税務というのはその国の礎になるものだと思うからです。その結果、外国人もミャンマー人も区別のないわかりやすい税務制度が確立され、ビジネスがやりやすい環境になることで、国がさらに良い方向へ発展していく一助になれればと考えています。



エスシーエス国際会計事務所 SCS GLOBAL CONSULING MYANMAR LTD
事業内容:法務・税務・会計
URL: http://www.scsglobal.co.jp

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