2017年6月28日
-御社の事業について教えてください
"K"LINE LOGISTICS(MYANMAR)LTD. は、"K"Line Logistics, LTD.が70%、Earth Freight Forwarding Co.,Ltd.が30%を持つ合弁会社として設立し、2015年3月に営業を開始しました。
弊社は川崎汽船を母体に、世界約80か所に拠点を持つ総合物流会社で、我々の持っているネットワークと、Earth Freight Forwardingの持つミャンマーでの20年の物流のノウハウを活かして事業を展開しています。
Earthグループには、電子部品の製造会社や、商社、ソーラーパネル販売・設置などのグループ会社があり、現在は弊社の取り扱い荷物の4割程度をグループ会社の荷物が占める状況となっています。他にもアパレル関係やODA関係の建設資材や機械などの輸出入、通関業務などを行っております。
-ミャンマーに来られたきっかけは?
私は2006年から"K"LINE LOGISTICSグループのタイ法人に駐在しておりました。2011年頃から労働コストの上昇や政治的リスクの顕在化、また成長市場としての可能性を探る意味からも、タイプラスワンという言葉が聞かれるようになりました。そこで、ラオス、カンボジア、ミャンマーへの進出を検討し、2011年2月にミャンマーに始めて訪問し、調査を開始しました。2012年からは、取引のあった代理店との連携強化のために毎月ミャンマーに訪問するようになり、2013年にはミャンマーへの進出が正式に決定がされました。私自身は、2014年でタイの駐在を終えて、日本に帰任する予定でしたが、社長直々にミャンマーでの事業の立ち上げを任せたいと声がかかりました。ミャンマーには、豊富な人口や地理的な可能性に加えて、人々への魅力を感じていておりましたので、ひとつ返事でミャンマーへの赴任を決めました。会社設立の際には、法規制の問題等、紆余曲折もありましたが、良いパートナーにも恵まれ合弁会社を設立し、事業をスタートすることになりました。
-ミャンマーの市場環境について教えてください。
2013年はミャンマーブームの真っただ中で、様々なニュースでラストフロンティアと取り上げられていました。あの時に感じた感触と比較すれば、実感としてはそこまでの勢いを感じられず、日系企業の進出は当初の思惑通り進んでいないのかもしれません。
ミャンマーの商工会議所の運輸部会は35社を超えていますが、それに対して製造業の数はまだまだこれからで、かつティラワ方面に集中しており、競争は激しいです。しかし、製造業が進出していくためには物流が整備されていることが不可欠です。製造業が安心して進出できるように、ミャンマーでも日本並の付加価値をつけた物流サービスと安心感を提供することが重要です。そのために、いち早くミャンマーに進出し、職員の教育を充実させて、サービスの向上、経験を蓄積していく必要があります。
-ミャンマーにおける物流の問題点を教えてください
まずは、道路インフラの整備です。道路の状況が悪い、橋の荷重制限や幅などにより迂回をする必要があったりと、運搬上でのリスクやロスが多く存在しています。タイとの国境の街ミャワディでは、荷物の積み替えを行う必要があり、物品へのダメージのリスクや、積み替えにかかる時間のロスがあります。今後は、スルーコンテナやダブルライセンスなどで、積み替えのリスクや、車両替えの時間のロスを減らしていく必要があります。
また、2016年11月より日本の電子通関システムMACCS(Myanmar Automated Cargo Clearance System)が導入されました。しかし、まだ全てが電子化されているわけではなく、マニュアル作業の部分では迅速な対応ができていません。また、税関では未だに全部検査に近い検査が行われていますので、かなりの時間のロスがあります。
また市内では、12月から9トン以上の大型車は日中時間は通行できないという通行規制が始まりました。ヤンゴン市内の渋滞緩和を目指した施策です。夜の9時から朝の6時以外は通行できないという厳しい規制です。平日だけでなく、土日も適用されています。一部制限が緩和されている道路もありますが、工業団地にアクセスする道でも規制が適用されています。これにより、荷物の搬出がまる1日遅れたり、夜間の積み込みに対応する作業員の確保など、時間だけでなくコストもかかってきます。渋滞緩和も重要な課題ですが、産業全体の発展をトータルで考えた政策をとって頂きたいと思っています。
-物流業界における不正や汚職はどのような状況でしょう
日本でも通常税関は、無税・免税品の場合は輸入申告後ただちに輸入、それ以外でも書類審査、貨物検査の指定を受けたものでも、見本検査、一部検査、全部検査を行います。ミャンマーでは、全部検査が行われていますので、書類審査等のランダムな検査を導入することで効率化が求められます。
しかし先日、地場のある企業が、輸出禁止品目を偽装書類で輸出しようとして、港で摘発される事件がありました。
日系企業のようにコンプライアンスを遵守する会社ばかりではありませんので、このような事件があると、効率化の足かせになりかねないと懸念しています。
また、MACCSの導入により、インボイスをベースとする申告納税方式に切り替わることで、通関後の事後調査も実施されるようになります。また電子化によりより透明性の高い、迅速な通関が行われるようになります。しかし現状では、マニュアル作業で対応していることころもまだまだありますので抜け道は存在しますが、将来的にはシステム化が進んでいくことにより不正は減っていくと思います。
-御社の強みについて教えてください
弊社は、現在37名でオペレーションをしており、スタッフの中には、合弁会社で20年間の通関業務を行っていたスタッフもいます。ミャンマーの通関業務は、非常に複雑ですので、経験がないとスムーズに進めることが出来ません。その点、弊社には経験の豊富なスタッフがおり、様々なトラブルにも迅速に対応が可能です。通関業務を自社で完結して行うことができるというのが、弊社の一番の強みだと思っています。
-次の一手、またご自身のミャンマーで成し遂げたいことを教えてください
今後はクロスボーダー取引、そしてミャンマー国内の物流にも力を入れてていきたいと考えています。また、現在は提携先の倉庫を使用していますが、自社倉庫を作り倉庫業務を始めることで、業務の幅を広げていきたいと考えています。
私自身の使命としては、法人立ち上げから携わった責任もありますので、100年続く企業になるような社内基盤、人材基盤を作っていくことだと考えています。そのためには、経営意識を持った幹部の育成が重要です。日本人の駐在員はいつまでもミャンマーにいられるわけではありませんから、ナショナルスタッフを育てていくことが会社の存続や価値を上げることに直結します。
物流業も重要なのは人です。どのように効率よく運ぶか、対応していくのかというコーディネート力が必要です。お客様の立場で考えて、何をお客様が望んでいるのか。我々の価値観だけではなく、刻々と変化するお客様のニーズを察知して提案をしていく会社を目指します。社内では、Our Service is Customer Happiness.をスローガンとして取り組んでいます。製造業の方が安心して進出し、通関や物流に関わるトラブルをフルサポートし、頼れるパートナー企業となれるような経営基盤を構築していきます。