2017年6月23日
―ミャンマーの物流環境は大きく変わってきていますね。
はい、輸入については、先日日本の電子通関システムに似たシステムが導入されました。これは、これまで紙ベースで行っていた通関手続きをコンピューター上で行うもので、慣れれば相当の時間の短縮になると思われ日本側の期待は大きいものです。現状で4~5日かかっている通関がすぐに終わるのなら、とても助かります。しかし一方で、慣れも必要ですので運用が始まってみないと本当に短縮されるのかわからないところがあります。
また、税関が輸入品の課税価格を決める賦課課税制度も機械・車両以外の一般貨物は実際の価格をもと課税される制度に代わりました。それまでは、日本製品は中国製品などと比べ課税価格が高く設定されていたため、日本企業には有利になります。
物流環境は、いい方向に向かっていることは間違いがないのですが、そのスピードや程度、実態を伴うかどうかをしっかりみてく必要があります。
―内戦の関係で開発が進んでいなかった東西経済回廊も便利になりましたね。このタイとミャンマーを陸路で結ぶルートはどうでしょうか。
このルートは、上組がいち早く運送をはじめています。バンコクからヤンゴンまでのトラック輸送のリードタイムは4〜5日です。これは、マラッカ海峡を大回りせざるを得ない海上輸送が、通関も含め約20日かかっていることを考えると、有望なルートです。
このルートは、カレン族の武装勢力の支配地域を通ったため、開発が進んでいませんでしたが、武装解除が進み、一日交代の片道通行の道路のほかにバイパス道ができたため、便利になりました。
このルートは会社としても力を入れており、上組は日本からトレーラー約30台を持ち込み自社車両で輸送します。今後ボリュームが増えてくると思われ、将来的には毎日の定期便とする考えです。また、タイ国境のミャワディに現地事務所を置きたいと思っています。
―ティラワ経済特区(SEZ)にも倉庫を作りました。
住友商事との合弁で、2016年3月から営業しています。同じビルには税関も入居しており、スムーズに通関も進めることができます。メインターゲットはティラワSEZに工場を持つメーカーですが、そのほかの地域のお客様でも対応できます。保税倉庫としての機能もありますので、買い手がまだ決まっていない貨物などを通関しないまま倉庫に保管することができます。
―ミャンマーの物流の需要は増えると思われる一方で、ライバルも増えていますね。
将来的に増えるのは間違いなく、上組としても「ミャンマーは上組だ」と言えるほどにしていきたいという思いはあります。しかし、どの程度伸びるかというのは、通関制度やインフラなどの各種の障害がどの程度取り除かれるかに大きく左右されますので、一概に言えないところがあります。ティラワSEZだけをみても日系で6社が進出を決めており、2社は操業中ですね。競合は確かに増えていますが、いち早く始めた実績がありますので、一歩リードしていると自負しています。
現状では、ミャンマーの物流費はとても高いのです。タイと比べれば大幅に高く、日本と同じくらいです。これは、制度上の欠陥があるなどの理由があるのですが、これを一つ一つ解決していき、ボリュームを増やすことで、物流費を大幅に引き下げたいと思っています。一朝一夕では実現できませんし、上組だけでもできませんが、ビジョンとしてはこの国の物流を大きく改善して、効率化したいと思っています。一歩一歩手を打って行きたいと思います。