2017年6月23日
―トラストベンチャーパートナーズは、ミャンマー企業向けのコンサルティング会社を標榜していますね。どうして資金力のない地元企業をターゲットにしているのですか。
ミャンマー企業のアドバイザリーがメインのビジネスです。そのうえで、ミャンマー企業とのネットワークを生かして外資系企業の進出や業務拡大も支援しています。
地元企業への助言は、財務アドバイザリーが中心です。企業の資金調達や組織再編を通じて、企業価値を最大化することが目的です。その一つの方法として、外資との提携もあるかと思います。
―ミャンマー側に立つアドバイザーは、従来なかったと聞いています。
そうですね。外資系のコンサルティング会社では、外国人スタッフらにコストがかかりすぎて、地元企業ではとても手が出せません。ビジネスとして成立しないのです。弊社では、私以外はミャンマー人スタッフです。あくまでもミャンマー人によるサービスを基本にしています。運営コストを下げることで、ミャンマー企業でも利用できるようにしています。
一方、ミャンマー企業と提携しようとする外資系企業も困っているのです。
提携する際には、双方にアドバイザーがつくのが望ましいです。
しかし、この国ではミャンマー側にはアドバイザーがいません。そうしますと、交渉しようにも、話がうまく通じないということになります。買い手は安く買いたい、売り手は高く売りたいというのは当然ですから、会計など専門的な「同じ言葉」が通じる人間でないと合理的な議論にならないからです。ミャンマー側のアドバイザーがいない状況では、社内にそうしたスキルがある人材を抱えている数少ない大企業に外資系の提携の話が集中するという事態が生じます。
―進出企業にとって「パートナーリスク」がとても大きいという指摘があります。
そうですね。例えば、一般的に日本で新しいビジネスをする人はバリューチェーンにおける自社の位置付けや企業間の依存関係など企業社会の生態系について、詳細に研究をすると思います。しかし、なぜか新たに海外に進出する企業は「うちの商品はまだミャンマーにはない。こんなに良い物であれば売れるはずだ」との発想で進出を決めてしまうケースが散見されます。
私も、大和証券社員として初めてヤンゴンに来たときにはそうでした。それではうまくいくはずもなく、きちんとした情報や分析が必要です。
ところが、日本ではネットや書籍に加え、帝国データバンクなどの調査会社もありますが、ミャンマーでそうした情報を得るのは至難の業です。
こうした深い企業社会の情報は、ミャンマー人でなくては集められません。
弊社では、コンサルティングを通じて培ったネットワークを利用し、ミャンマー経済を網羅的にカバーしたプラットフォームを作ることが目標です。これを弊社の付加価値として提供したいと考えています。
―パートナー選びに失敗しないためにはどうすればよいのでしょうか。
そうですね。ミャンマー人も日本人と同じで、あまり本音を表に出しません。本当に提携相手に求めているものが何か、というのをお互いはっきり言わないのですね。しかしそれではあとあとトラブルになります。交渉の段階で、お互いが自ら何を提供して、何を相手に求めるのか明確にしておくべきです。
また、事業開始後にどうコミュニケーションをとっていくか、事前に定めておくべきですね。一度信用できなくなると余計に情報を出さなくなり、それがさらに不信感につながるという負の連鎖を避けるべきです。
コンサルティング会社を使う場合は、現地に浸透している企業を選ぶべきです。弊社は、例えば提携を仲介した場合に、求められれば出資して責任を明確にしています。ただのアドバイザリー業務ではなく、その先の両社の関係やビジネスにも責任を負うという姿勢です。そうした長期的なお付き合いができればと思っています。