2017年6月16日
—進出検討企業にとって、ミャンマー特有の課題を教えてください。
生の使えるデータや情報が極端に少ない事がまず上げられます。2011年の民主化以前までの経済的に鎖国していた状態で、はまともな調査機関も機能しておらず、30年以上も国勢調査も行われていない状態でした。
モノの価格や習慣といったミャンマー人の趣味趣向等の消費に関するデータはもちろん、人口比率や年齢構成、平均所得等についても日本で進めていた事前調査と、現地の現状に大きなギャップが生じるケースが多く、そもそも欲しいデータがまったくない。ということも散見されます。
結果的に正しい判断ができず、進出の検討すら進まないと頭を抱えて二の足を踏むお客様が非常に多いですね。
—親日家が多いと聞きますが、パートナー企業探しはどうでしょうか。
確かに、日系というだけで提携に積極的な姿勢をみせる現地企業が多い事は事実です。しかしながら、ファミリー企業が多く、内部情報を開示するという意識や文化がまったくありません。
会計においても、他国では考えられませんが発生主義の概念が希薄で、キャッシュしか見ていないローカルの大きな企業も多々あります。ましてや証券市場もオープンしたばかりなので、パートナーのデューディリジェンスは困難を極めます。多くの業種が、ミャンマーで事業展開するにあたっては現地企業とのあらゆる側面においての提携が欠かせないのですが、パートナー企業選定が難航するケースも頻繁にみられます。
—他国と比べて、規制も多いと聞いています。
そうですね。規制が多い事そのものは仕方がない事としても、その規制のルールが突然変わったり、企業や役所の担当によって判断に差異が生じる事も珍しくありません。
実際に事業をはじめても、明文化されていない暗黙のルールに振り回されて、苦労されているお客様も多いです。例えば、小売業においては外国投資法をはじめ関連法案に具体的な記述がないにも関わらず、実際に認可申請をすすめるとほとんどのケースでは許可はおりない状態が続いていました。しかし数ヶ月前に申請したある小売業のお客様は見事に認可を得て、既に事業をはじめています。
従って、ミャンマー進出を検討される場合には、明文化されているルールだけではなく、現地で情報収集を行い、実状を併せて理解した上で検討する必要があると思います。
— 新政権に対しての期待感はいかがでしょうか。
NLDの新政権になり、新たな政策方針の発表もありましたが、その内容はあまりに具体性に欠けており、外国企業にとって投資判断に使えるようなものにはなっていません。いつになっても良くならない電力事情についても、外国企業の進出判断を鈍らす大きな要因です。工業団地でも場所によっていまだに停電が頻発してしまうような状況では、外国企業の誘致にアクセルは掛かりません。エネルギー政策をはじめとした国としての骨太な方針、具体的な施策が何より必要と感じています。
— ミャンマーで有望な業種は何でしょうか。
あらゆる業種にまだまだチャンスがあるマーケットですが、上記のような状態なのでエネルギー/インフラ関連企業からのお問合せは今も増えています。また農業国という事もあり、農業、食品に関わるビジネス、また国民の大半を占める農民を消費者としてとらえた時にどの様なビジネスにつながっていくかという事を念頭において進出を検討する企業も多いです。
— 自ら希望されて赴任したとお聞きしています。
5千万人を超える人口、もともとは豊かな国であった事、インドと中国に挟まれた地理的な要因など、大きなポテンシャルを秘めているマーケットに果てしない可能性を感じていましたが、実のところそこからビジネスにどう繋がっていくのかあまりイメージできないままに「まずは現地に行く事が先決」とすぐに行動に移しました。
—今後の展望をお聞かせ下さい。
先日、アメリカからの経済制裁も事実上解除となり、日本からの8000億円の支援も決まりました。これからが本格的な勝負になってくると思います。本格的な競争も始まるでしょう。特に製造業を中心とした日系企業の力でミャンマーの真の発展を一緒に進めていきたいですね。