ミャンマーに進出する日系企業のための
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業界別インタビュー

優秀な人材にはオファーが殺到している

HR・人材育成

ミラク Mirac Co., Ltd.
取締役: 三浦 宏介 Miura Kosuke
進出企業にとって、ビジネス成否の鍵を握る「人材」。人材紹介を通じてミャンマー進出企業の支援を行い、キャリアコンサルタントとしてミャンマー人求職者1,000人以上と面談を通じてミャンマーという国と向き合ってきたミラクの三浦氏に、現在のミャンマーの人材業界と今後の可能性について話を聞いた。(取材日/2016年10月)
エグゼクティブ案件から労働者まで

—企業紹介をお願いします

 2015年1月から合弁会社として事業を開始し、日系企業・ローカル企業を相手にした人材紹介業と、求人情報誌「ジョブシーカーズジャーナル」(週1、ヤンゴン内のスーパー・コンビニ等で販売)の発行、求人ウェブサイト「ジョブシーカーズ」の運営をサポートしています。
 問い合わせの多い事務職の案件に加えて、エグゼクティブ(マネージャー以上層)求人の問い合わせが増加傾向にあり、場合によってはヘッドハンティングにも対応しています。
 他方では、日系企業の注目を浴びるティラワ経済特区での事業支援にも注力しており、当該エリアでは立ち上げ時の工場労働者募集も手伝う体制ができています。

人材争奪戦はさらに激化の様相

—ヤンゴンでは優秀な人材の不足が深刻になっていますね

 人材の奪い合いは既にはじまっていますが、今後はさらに激化していくと思います。
 今、日系企業から求められている人材は、英語もしくは日本語でのコミュニケーションができ、特定の業界での専門的な知識と経験を持ち、業界内に人脈のある人材。こうしたスキルのある方からは「面接する度に内定を頂き、断るのが大変」との声を聞くことも少なくありません。マネージャー層や、セールスマーケティングの経験者、日本語の話せる人材といった分野では、既に人材争奪戦になっていますし、今のミャンマーでは高給と判断される1,000ドル以上の給料を希望する人材でも優秀と判断されれば、オファーが殺到している状況です。また求められる経験・スキルがピンポイントになってきている印象もあります。
 また、10月に発表された欧米の経済制裁解除を受け、この動きはさらに加速していくでしょうね。今後、各社の事業拡大に伴って、専門分野を持った人材へのニーズが高まっていくでしょうし、人材紹介会社自体も各社の専門分野に特化していく流れも生まれるでしょう。

 ちなみにメディアに関していえば「どうやって求人を見つけたか?」との質問に対する回答を定点観測した非常に興味深いデータがあります。2014年には求人誌経由が45%と半数を占めていましたが、2年経った今ではその割合は20%に減りました。その反面、Facebookを含む、インターネット経由で求人を見つけるケースは大幅に増加しているため、求職者への告知方法も戦略転換の時期です。ミャンマーではスマートフォン等でネットを楽しむ人がほとんどなので、Facebookを含むモバイル端末利用者の使い勝手の向上を目指して、自社サイトの見直しに取り掛かっています。

「人材の定着」に対しての備えが不可欠

—採用以外では、人材に関する課題としてどんなものがありますか?

 「人材」についての課題を採用、育成、定着の3つのフェーズで考えると1番根深い課題は定着だと考えています。人材紹介会社だからというのもあるのでしょうけど、お客さまから「せっかく育てた社員が辞めてしまった。」といった類いの相談をよく受けます。他方で、これまで1,000人以上のミャンマー人と話してきて、定着に関する課題の根深さを痛感しています。
 今のミャンマーは、日本とは環境が大きく違いますよね。例えば、年金や退職金といった老後保障はないし、土地の価格や家賃が高騰していて、未だまともな住宅ローン制度は整備されていません。意外と多くの候補者が口にするのが「ヤンゴン市内、できれば中心部に家を買いたい。」との声。起業・転職を考える人の動機の1つが「将来、家を買うためにもっと稼ぎたい。」であり、決して少数意見ではありません。日本人が「大企業で働けば将来も安泰」と考えるのとは、周囲の環境が違い過ぎるのでしょうね。今の日本のような環境がミャンマーで整ったとしても10年単位の時間を要するでしょうし、それを待つには、時間が掛かり過ぎます。よって、他の手を考えないといけません。

 今のミャンマーの環境を踏まえると、優秀なコア人材に定着してもらうための方法として「給料や福利厚生等、待遇面で魅力的なインセンティブを与える」か、コア人材が辞めた後のリスクを減らすべく「属人化している業務を無くし、平準化させる」等の定着課題への対策を講じていく必要がある、と考えています。

—人材紹介業界全体の課題と感じていることはありますか

 本当の人材紹介ができるプロのキャリアコンサルタントの育成でしょうか。
 通常の事務職採用の案件でも同じですが、とりわけエグゼクティブ求人への対応に際しては、より精度の高いスクリーニングが求められ、その役割を担うキャリアコンサルタントの存在が重要な鍵を握ります。例えばマネジメント能力を判断する上では、マネジメント経験のあるキャリアコンサルタントが、履歴書からだけでは読み取れないマネジメント資質を、経験を通じた鋭い質問を通じて見極められるのが必須スキルだと思っています。ただの仲介業ではなく、人材紹介のプロとして見極め・マッチングのできる本物のキャリアコンサルタントの育成も課題の1つです。

プロの人材紹介業として採用を支援

—御社の次の一手をお聞かせください。

 プロの人材紹介業として採用をお手伝いする中では、スクリーニング精度の更なる向上をはかり、ヘッドハンティング・エグゼクティブ案件を含めたお客さまからのあらゆる要望に的確に応えられるよう取り組んでいきます。
 また定着課題の解決に役立つ適職診断プログラムの運用に向けた準備をすすめています。
 あわせて、日系企業が続々と進出するティラワ経済特区での活動においては「ティラワの人材といえばミラク」と言われるよう、力を注いでいきますので幅広くお声掛けください。

—ところで、ミャンマーに来たきっかけは何だったのでしょうか

 親会社のアルバイトタイムス初の海外事業担当者として、2013年1月にミャンマーに来ました。その後、リサーチ・交渉を含めて2年ほど動き回り、正式に現在の現地パートナー企業と組んで人材紹介業のサポートを開始したのが2015年1月です。
 渡航直後から人材紹介業の開始を目的としてリサーチをしていましたが、ミャンマーで当事業を行なうには外資規制もあり、パートナー探しが不可欠でした。そのため、リサーチ段階では人材紹介事業以外にも様々なビジネスの可能性を探り、数多くのミャンマー人経営者の方と会いました。当初は、新規事業立ち上げをサポートする会社も少なく苦労しましたが、足で稼ぎながら50人以上の経営者にお会いし、ようやく現在のパートナーに巡り会えました。何度も話し合う中でお互いの求めている条件が合致したため、ようやくミャンマーで事業を始められる事になりました。それからも交渉は難航し、最終的な契約合意までは1年以上掛かりましたが。苦笑 今思えば、パートナー探しとパートナーとの交渉が精神的には1番大変でした。もう1度やるとか考えたくないですね


—最後に、個人的に成し遂げたい目標はありますか?

 今、「働いている社員が幸せであることが1番」だと思っています。立ち上げから現在まで苦労を共にしてきた社員なので、彼らには幸せな人生を歩んでもらいたい、それを弊社で働くことで実現してもらいたい、というのが本音です。当然、そのためにはトップランナーになる必要がある、と思っています。
 いつかはミャンマーを離れる時も来るはずなので、それまでに、現地の人材だけでビジネスを回すことができて、そこからきっちり収益が生まれる仕組みを作り上げたいですね。


ミラク Mirac Co., Ltd.
事業内容:人材紹介/求人メディア
URL: http://www.myanmarjobseekers.com/

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