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業界別インタビュー

経験とノウハウが交渉の鍵を握る

不動産・建設・オフィス

レオパレス21ミャンマー支店  Leopalace21(Myanmar Branch)
支店長: 脇 太一 Waki Taichi
「高い」といわれるミャンマーの不動産賃貸価格。需要と供給のバランスが崩れ、不動産価格が高騰した一方、2016年後半に入り、ようやく価格が落ち着き始めた。そんなミャンマー・ヤンゴンで不動産・賃貸事業を展開するレオパレス21 ミャンマー支店の脇氏にミャンマー不動産市場の概況 と課題について聞いた。(取材日/2016年11月)
お客様の「困っている」を事業に

−御社の事業内容について、お聞かせください。

 サービスオフィス事業と不動産全般に関わる紹介・仲介業務、不動産開発を展開しています。弊社は日本の上場企業の約80%の企業様に日本国内でご利用頂いております。そうした上場企業の多くは、既に海外進出をしているか、海外進出を検討しています。ミャンマー進出の際、駐在員の方が活躍する場となるオフィスや生活の拠点となる住宅といった不動産全般に関するサービスを通じて、進出を支援しています。
 ミャンマーでは、2014年7月から営業を開始した不動産仲介業を通じて、お客様から多くの相談を受けてきました。その中でよく耳にしたのが「オフィス探しに困っている」との声でした。そんな声を受け、2016年4月からサービスオフィス事業をスタートしました。場所はJETROや商社をはじめとした日系企業の集まる、プライムヒルビジネススクエア内最上階の好立地です。オフィス機能充実にもこだわっていますが、日系各社とのネットワーク構築にもメリットを感じたお客様にご利用いただいております。

開口一番言われる「高い」の一言

−オフィス探しに困っているお客様が多い、との話がありましたが、お客様はどんな事に困っていますか?

 お客様にご案内をさせていただくと、開口一番ほぼ間違いなく「高い」と言われます。ミャンマーの不動産市場をみると、需要量に対して、供給量が圧倒的に足りていません。供給不足に伴い、値段が高騰しています。サービスアパートメントの価格は、平均しておよそ1平米60ドル。平米単価比では、ベトナムの3倍近くとかなり高い水準です。
 オフィス物件でいえば、最も値段が高騰していた2014年夏頃の市内一等地のオフィスビル賃料は1ヵ月で1平米100ドルを超えていました。最近ようやくそのビルも1平米50ドル程度には落ちて来ました。それでも他のアセアン諸国の2倍近い水準ですので、お客様の気持ちもよくわかります。
 高くなっている理由としては、2001年頃から2013年の期間中、オフィス・住宅ともに物件数が伸びなかったことが挙げられます。建設プロジェクトがありませんでした。その後、2011年の民政移管後にプロジェクトが動き始め、2013年頃から稼働がはじまりました。
 オフィス物件でいえば、2013年当時は延べ床面積5万平米弱でしたが、2014年には10万平米近くに増加。2015年には、ミャンマープラザ完成の影響もあり25万平米になりました。2014年からの1年で2.5倍に増えた計算です。2013年と比べれば5倍です。2015年になり、ようやく供給量が増え、徐々に価格も落ち着き始めてきました。とはいえ、まだまだ高いですけどね。

−賃料はとても気になる問題ですが、例えばオフィス物件を契約する際に注意すべき点はありますか?

 オフィス選択の際、賃料の平米単価しか見ないお客様が多いですが、絶対に注意して欲しい事が1つあります。私は必ず「内装費も含めて検討ください」とお伝えするようにしています。同じ内装であってもオフィスビルによって内装費は大きく異なります。仮に内装費が1平米当たり500ドル掛かれば、いくら賃料は安くても、結果的に割高になります。家具もしっかりしたものを揃えようとすれば、それほど安くありません。よって、賃料以外に掛かる経費もしっかり見積もった上で検討する事を強くオススメします。
 事務所移転を前提とした進出の場合、はじめはサービスオフィスを選ぶ方が初期コストを抑えられるケースもあります。賃料以外に掛かる経費に合わせて、どれくらいオフィスを利用するつもりかも事前に考えた上でオフィス選びをしていただければ、と思います。

−サービスアパートメントをはじめとした、住宅の方が追いついていない印象ですが、いかがでしょうか?

 サービスアパートメントの部屋数でいえば、2002年から2012年まで横ばいで約750部屋。それが2013年に約1100部屋に増え、2015年には約1500部屋に増加。3年で2倍になりました。政権交代後の混乱で少し後ろにずれ込んでいますが、2016年〜2017年に掛けて、2200部屋に増える予定です。2012年当時から比べると3倍です。
 住宅物件の方が内装の仕上げが必要になる等、賃貸開始まで時間が掛かります。数として、オフィスに比べて人の異動(移動)の方が多いため、必要とされる絶対数も多くなります。よって、オフィス物件よりも需給バランス解消に時間が掛かります。
 ただし、以前よりも安価に住めるサービスアパートメントは出てきています。以前は最低価格でも4500ドル必要だったのが、2500ドルほどからサービスを提供するサービスアパートメントが出てきています。
 もっと大きな話をすれば、現在 オフィス・コンドミニアム・住宅含め100以上のプロジェクトが存在しているため、あと2−3年もすれば需給バランスは整い、適正水準に落ち着いてくるのではないか、とは思っています。

誰でも契約交渉ができるからこそ、経験・ノウハウが役立つ

−不動産業界における課題はありますか?

 ミャンマーで不動産を賃貸する際は、家主と交渉して契約をすることになります。実は、ここに落とし穴が潜んでおり、我々の持つ経験やノウハウがお役に立てる部分です。
 不動産の持ち主を見つけて交渉さえできれば、誰でも契約できます。だからこそ、交渉でいい条件を引き出せることもあれば、その逆に不利な条件を押し付けられているケースもあります。
 例えば、ミャンマーで不動産賃貸契約を結ぶ場合、家賃1年分の前払いがほとんどですが、交渉次第で半年契約でも可能となるケースもあります。また家具の設置や初期不良時の修理費の家主負担等々、交渉可能な点はいくつかあります。交渉ポイントを押さえ、交渉のバリエーションを幅広く持っているのが弊社の強みでもあります。また契約書で確認すべき点等、多くの賃貸契約を取り扱ってきた中でノウハウが蓄積されています。事前にご相談いただければサポートできたかもしれない、といった話も耳にしています。実は多くの方が泣き寝入りしているんじゃないかな、とも思っています。

−これは危なかった、という具体的な事例はありますか?

 弊社の顧客ではありませんが、ミャンマー人スタッフに賃貸契約を任せた方から、こんな話を聞いた事があります。
 スタッフが見つけてきた物件を気に入り、法人名義で家主と契約を結んだそうです。翌年の家賃上昇リスクを抑えるため、2年契約を結び、2年分の賃料を支払ったそうです。一見、うまく交渉したように見えますが、実は、ここに落とし穴があります。
 ミャンマーの不動産譲渡制限法5条で、外国人への1年を超えた不動産賃貸は禁じられています。よって、法律的には1年を超えた契約は無効となります。
 仮に家主から「1年以上の契約は無効だから返金しない」と言われたとします。その場合、いくら裁判で争っても返金を勝ち取るのは難しいでしょうね。
 なお当件については、お互い知らなかったために起きた事例で、問題なく2年間滞在できたそうです。もし相手に悪意があったら、と考えるとゾッとしますよね。
 家主も借りる側も賃貸契約に慣れておらず、ルールを知らなかっただけではあります。しかし、何かあってから「知らなかった」では済まされませんからね。もし我々が間に入れば、さすがに今回のような事例は事前に防げると思います。不動産市場全体が未成熟なため、日本や他国とはまた違う、ミャンマーならでは、の難しさがあります。

お客様に喜んでもらえるサービスを提供し続けたい

−ミャンマービジネス展開における次の一手はどんな事をお考えですか?

 弊社は現在3人の日本人駐在員を抱えています。アフターサービス選任のスタッフもおりますので、アフターサービスに関しては、どこの会社よりも手厚く対応できる体制が整っています。この基盤を活かして、もっと「お客様に喜んでもらえるサービス」を提供し続けていきたいと思います。
 進出当時から可能性を模索し続けているサービスアパートメント事業にも着手したいですよね。
 弊社は日本発の会社なので、日系企業への対応を得意分野としていますが、米国の経済制裁解除の流れを受けて、外資企業からの問い合わせも増えています。フィリピンのマニラでお付き合いのあった企業様からの問い合わせ、といった横展開もあります。
 弊社が冠スポンサーのミャンマーオープン2017は、全世界放送を予定しており。日系の枠にとらわれない活動展開をしていきます。
 私1人からはじまった弊社ミャンマー支店も10人の規模になりました。スタッフが増えてやれる事も増えています。事業として成り立ち、かつお客様に喜んでいただけるような、ミャンマーの需要にマッチしたサービスをつくりあげたいと考えています。
 「そこ、やってくれるんだ、助かるなぁ」とお客様から言っていただけるサービスを展開していきたいです。
 例えば、先ほどお話に出たようなサービスアパートメント事業を展開するとなれば、自社ですべてのサービスを内製化し切るのは難しいと思っています。各分野のプロフェッショナルである色んな企業と協力しながら進めていきたいと思っています。皆さんの力をお借りしながら、お客様に喜んでもらえるサービスを提供したいですね。


レオパレス21ミャンマー支店  Leopalace21(Myanmar Branch)
事業内容:
URL: http://leopalace21mm.com/

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