ミャンマーに進出する日系企業のための
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TOP INTERVIEW
トップが語る、ミャンマービジネス(2017/06月発刊1号より)
500年続く会社をつくりあげていきたい。 (2/2)

  ミャンマー随一のコングロマリット(複合企業)MAX Myanmarグループ。設立は1993年。日本からの中古車輸出業からはじまり、ミャンマーへの建設機械の輸出入、その後、ホテル建設、高速道路の建設と事業を拡大。設立から24年が経過した2017年現在時点では、銀行、保険、証券も含めた10事業を展開。多忙を極める同氏が、日系企業への期待を込めて応じてくれたのが今回の単独インタビューだ。
決して裕福ではない家庭の6人兄弟の中で生まれ育ち、12歳から家計を支えるために働きはじめた。会社設立から20数年で、MAXグループ全体で1万7,000人を超える規模に拡大させた同氏の熱い想いや目指す未来とは。(取材日/2017年2月)。

(1/2)からの続き

国民の民間企業に対するイメージをよいものに変えたい。

次の一手としてはどのようなことを考えていますか。

 現在、弊社は上場を目指しています。6年前から経営の透明性を高めるべく取り組んでおり、上場のタイミングを見極めている状況です。海外・国内の双方において私の保有する株式を公開することで、さらに会社の透明性を高め、世界中の起業家達と同じフィールドに立ちたいのです。
ミャンマーは、この50年で大きく出遅れました。すぐに大きく変わるのは難しいです。しばらくは耐えることも必要でしょう。変わるのには、時間が掛かると思います。
私は、これまで20年以上ビジネスに携わってきました。国内外の多くの友人との交流の中で、国際水準のビジネスのあり方を学んできました。責任感を高く持った上で事業に取り組むことが必須だと感じています。弊社の事業活動を通じて、ミャンマー国民の民間企業に対する信用も高めていきたいと思っています。
これまでのミャンマーでは「成功している民間企業は政府と近い距離にいて、民衆を騙して美味しい蜜を吸っているに違いない」と見られていました。そうしたイメージを払拭し、よいものに変えたいのです。
日本でも他の海外の国でも、民間企業は政府と協力しながら、透明性を担保しつつ事業を展開しています。ミャンマーもそうなっていく必要があると思います。起業家と政府間の協力体制が築かれていけば、国内の仕事の絶対量も増えていくはずです。そのためには、政府も民間企業もビジネスマンも、それぞれが変わっていかなければなりません。
経営サイドが労働力を搾取するのではなく、従業員や社会への還元も必要です。民間企業がいい給料を支払い、国民の生活水準を引き上げていくことも必要です。私は従業員のことを家族のように大切に思っていますし、時には一緒にご飯も食べます。しっかりと給料を支払うのはもちろんですが、それに限らず、人材の育成にも取り組んでいます。弊社では1万7,000人以上の人材を抱えていますが、従業員が成長していく姿が見えるのは嬉しいものです。職業訓練や学校での教育のレベルアップも必要ですが、個人的には、弊社において大学卒業直後の人材を採用して、仕事を通じて人材を育てていきたいと考えています。

ミャンマーを世界の国から信用され、ブランド力のある国へ。

ミャンマーを代表する起業家として、ミャンマーをどんな国にしていきたいですか。

 私が今一番強く望んでいるのは、「ミャンマーの国が平和であること」です。そのためには、法の支配と法律の執行が実現していることも欠かせません。ミャンマーは教育レベル、平均給料、衛生面、あらゆる分野で他国から大きく出遅れている状況です。田舎に行けば、農業で生計を立てている人が多く存在しています。そうした方々も含めて、5〜10年で、ミャンマーの人々の給料水準が、世界の平均レベルまで上昇している光景を見たいと願っています。
例えば、タイやマレーシアに出稼ぎに出ている多くのミャンマー人が存在しますが、私は7−8年前からマレーシアに渡航し、現地で働くミャンマーの人達に会って話を聞き、彼らの課題解決にも取り組んでいます。現時点、タイやマレーシアで働いているミャンマー人が母国に戻ってくるのは、問題が起きて止むを得ない事情の時だけ。この状況を変えられればと思っています。ミャンマーで同等の給料を手にできるようになり、子供の教育環境が整い、公平な国になっていけば、きっと彼らもミャンマーに帰ってくると信じています。そのためにも給料水準引き上げが必要です。
さらには、ミャンマーを世界の国から信用され、ブランド力のある国にしたいです。
国の事を考えると、経済状況もよくなければ、ミャンマーのブランド力は高まっていきません。政治面だけがうまくいっても意味がありません。国民全体の生活レベルをあげることが求められます。また外国投資家にとって優しい国であることも重要な要素です。そうした意味では新しい経済指針や、新投資法はとてもいいものだと思っています。
一方で、タイ、ベトナム、カンボジア、ラオス、アフリカなど他の国もミャンマーと同様に外国投資の促進に向けた働きかけを行っています。国際的にみれば、あらゆる分野で各国は成長し続けています。投資家は他国比較の中で、投資先を選びます。ミャンマーとしては、自国の状況に目を見張り続ける必要があることはもちろんながら、他国の状況もチェックし続ける必要があります。海外投資家から信用されるためには、長く続くブレない方針が必要です。これからは、当然、結果も問われていきます。目に見える成果も必要になるでしょう。

500年残り続ける会社をつくりあげていきたい。

先のことを見越してビジネスをしているように感じます。どれくらい先を考えて事業をされていますか。

 私が死んだ後も「300年500年と残り続ける会社」をつくりあげていきたいと思っています。私自身の名前が残ることにはまったく興味がありません。確かに私はMax Myanmarの創立者ではありますが、会社自体は誰がマネジメントしていても、誰が株を保有していてもいいと考えています。自分1人でお金を独り占めしたいとも思いません。現在、ミャンマーの会社は10年20年で消えていくことがほとんどですから、しっかりと会社が残るようなシステムを作り上げたいのです。10年で会社が潰れていってしまっては、ミャンマーの国のためにもなりません。私も70歳80歳になれば、若い時のように仕事はできなくなるでしょう。だからこそ、今できるうちにどこまでできるか挑戦し続けたいと思います。その一環として、私が学んで来た経営のあり方について若い起業家に伝えていきたいです。
国の発展のためには、外国企業の投資ももちろん大切ですが、私自身はミャンマーの起業家の活躍に期待を寄せています。タイ、日本、アメリカといった発展している国を見渡せば、必ず国内企業が活躍しています。私が引退した後にも、次世代の起業家が活躍している姿を見たいですし、将来的にはミャンマーから世界レベルの起業家が育って欲しいと思います。

リスクの裏にチャンスがあります。リスクを取らないと成功はありません。

日本企業へのメッセージをお願いします。

  日本政府や日本の民間企業のミャンマーに対する支援に関しては深く感謝しています。
今、ミャンマーの国は大きく変わりはじめました。新しい投資法も2017年4月には運用を開始します。ミャンマーの国は、日本から見たら問題も多く、リスクも高いとは思います。例えばミャンマー企業を対象に業務提携や買収を検討するにしても、国際水準で考えると決して容易ではありません。例えば、ウェブサイトのない会社も多いですし、透明性の観点から見ても課題は残ります。国内法に関する理解を深めておく必要もあります。
しかし、リスクがある一方で、多くのチャンスがあります。どの国でも言えることですが、リスクを取らないと成功はありません。とりわけ日本企業の場合、リスクがあるとなかなか踏み込まない傾向にあります。しかしミャンマーには多くのビジネスチャンスが埋もれています。
国の政策や外資規制や企業活動を見渡しても、日本とミャンマーでは大きく環境が異なります。長い目で、リスクもチャンスも見越して考えていく必要はあります。決してリスクは低くありませんから、ゴーサインが出せない気持ちもわかります。それならば、時間をかけてしっかりミャンマーのことを理解して欲しいと思います。日本には多くのノウハウや技術があります。ミャンマーにないものが日本にありますし、日本にないものがミャンマーにはあります。業界にもよりますが、今すぐチャンスが巡ってくることはないかもしれません。
現在、インフラ整備がはじまっています。インフラが出来上がった3年〜5年後を見越して、次の一手を考えることもできると思います。これは政府サイドでも民間サイドでも同じことが言えると思います。
ぜひ日系企業と一緒にミャンマーをいい国にしていきたいですし、多くの日系企業がミャンマーの地で活躍している姿を見たいです。

マックスミャンマーグループ Max Myanmar Group
Chairman
ゾーゾー氏    U Zaw Zaw
 ミャンマー随一のコングロマリット(複合企業)MAX Myanmarグループ。設立は1993年。日本からの中古車輸出業からはじまり、ミャンマーへの建設機械の輸出入、その後、ホテル建設、高速道路の建設と事業を拡大。設立から24年が経過した2017年現在時点では、銀行、保険、証券も含めた10事業を展開。多忙を極める同氏が、日系企業への期待を込めて応じてくれたのが今回の単独インタビューだ。
決して裕福ではない家庭の6人兄弟の中で生まれ育ち、12歳から家計を支えるために働きはじめた。会社設立から20数年で、MAXグループ全体で1万7,000人を超える規模に拡大させた同氏の熱い想いや目指す未来とは。(取材日/2017年2月)。