− ヤンゴン市内の渋滞の予想以上の状況に狼狽するビジネスマンも多いですね。
そうですね、とにかく渋滞が酷いです。徒歩で移動すれば15分の距離も30分以上かかってしまうことも珍しくありません。ヤンゴン市政府も課題認識はあり、数々の施策を打ってはいますが、有効打と言える効果はまだ見えていない状況です。
− なぜこのような状況になったのでしょうか。
ミャンマー在住歴が長い先輩に聞くと、2010年前後は信号待ちで5台も並べば「今日はクルマが多いなぁ」と感じるほど車が少ない街だったと聞いています。
しかし、2011年の輸入関税の大幅な引き下げにより大量に日本から中古車が輸入されるようになり、2012年頃から急激に交通渋滞が悪化していきました。もともとヤンゴンは地下鉄やBTS等の大量輸送型交通手段がないために、交通手段としてはバス等のクルマでの移動が一般的です。また、バイクの走行も禁止されているため、一台あたりの輸送効率が芳しくない。加えて、路上駐車が蔓延している事もあって、東南アジアの他国と比べてもかなり渋滞状況は悪いと言えると思います。
−ドライバーの運転技術やマナーのレベルはいかがでしょうか。
年々悪化していると感じています。民主化以前は仕事自体が少なく、海外経験を持つ人材もタクシードライバーをしていたり、比較的優秀なドライバーが多かった。しかし、こうしてたくさんの仕事ができてきた現在では、そうした優秀な人材は他の仕事をするようになりました。選択肢が以前より格段に増えましたから。
また、お金で運転免許書が買えてしまったり、無免許運転もまだまだ横行しており、非常に危ない経験をする事も多く、実際に交通事故も多発しています。
方向指示器(ウィンカー)を出さなかったり、追い抜き運転を好む傾向にもありますので、よく接触事故も発生しますし、最近では少なくなりましたが、反対車線の逆走も中央に縁石を設置するまでは日常茶飯事でした。
また、右車線、右ハンドルという世界でも特異な状況なため、左折時や車線変更時の事故が多いと聞いていますし、乗客の立場からいえば、乗降車時にも危険ですね。
− 外国人のみなさんはどうやって移動しているのでしょうか。
タクシーが多いですね。しかし、タクシーもメーターを設置しているタクシーはまったく存在しておらず交渉制、しかも運転手とはミャンマー語で交渉、車両もとても清潔とは言えないケースがほとんどで、中には窓ガラスが閉まらないということもあります。また、エアコンが効かない車両の場合は、渋滞中の長い信号待ちでも、排気ガスに我慢しながら信号待ちをしなくてはならないといった事も発生します。また領収書が出ないので経費管理が煩わしいという声も聞きます。
−自分で運転できないのですか?
可能です。諸手続きをしてライセンスを取る事はできます。が、運転マナーが荒く、事故に巻き込まれる可能性も高いですし、万が一、加害者側になってしまった場合、外国人は裁判で勝てる可能性は非常に低く、リスクヘッジの意味でも自分で運転なさることはオススメできません。
−今後の交通政策はどうなっていくと思いますか。
渋滞緩和に対して、政府は強く問題意識を持っています。実際に1月にはバス路線を大きく改革しました。計画性に乏しく、複数のバス会社が似たような路線を走っているような状況だったので、路線を大幅に減らし、車両も古いものは走行禁止になりました。確かに以前より道の中央で止まっているバスを見かける事は少なくなったように思います。
また、製造業の誘致という側面も持ち合わせていると思いますが、中古車の輸入についても基準がどんどん厳しくなっており、昨年の春頃からは物理的に車両の数は増えていません。今後は少しづつ左ハンドルの新車に切り替わっていくものと思います。
−御社が力を入れている点を教えてください。
ドライバーの教育です。前述の理由からか優秀なドライバーを採用していくことが年々厳しくなってきています。当然人件費もあがっています。
それではどうするか。しっかりと気持ちを持ったドライバーに運転マナーやサービスを伝えていきたいと考えています。運転技術もサービスも、根っこにあるのは相手を思いやる気持ちだと思うのです。ドアを開けて差し上げる等のサービスはもちろんですが、日頃運転しているすべての瞬間で相手のことを考える気持ちを持ちながら業務に勤しんでほしいと思って指導しています。
また、ITシステムの導入にも積極的です。GPSを用いた走行管理等で不正がしにくい、できない環境を作り、ドライバーにはお客様へのサービスに集中できる環境をつくっています。
− 苦労もあられるかと思います。
電気が止まったり、水が止まったりと苦労も耐えませんが、とにかくこの国が好きです。はたらいている仲間はもちろん、レストランの店員さんや、道で井戸端会議をしているおばさんですら、「ひとがいいなぁ」と感じます。
その中で、私はドライバーさんに対しての教育・指導や、仕事というものに対する職業感の醸成、サービスマインドみたいなものを伝えていきたいと思ってます。
現在、当社は日本人をはじめとする外国人の皆様に対してのみサービス提供していますが、当社が培ったノウハウをまた別の形で活かして、ミャンマー人の方々も利用するようなサービスにも挑戦していきたいですし、ヤンゴン以外の都市でもサービス展開していきたいと考えています。