カンボジアに進出する日系企業のための
B2Bガイドブック WEB版

2015年7月13日
カンボジア進出ガイド

【運輸・物流】

054 カンボジアの運輸・物流③(2015年4月発刊 ISSUE02より)

■ 低温輸送の取り組み Approaches to isothermal transport

(053 カンボジアの運輸・物流②からの続き)
 南部回廊での冷凍・冷蔵輸送、低温輸送を昨年8月から開始した鴻池運輸の高林氏は、「定温インフラに関しては、自社製品取扱業者や卸業者が自前の冷凍・冷蔵倉庫を持つのみで、物流業として冷凍車等を持つ企業はありませんでした。弊社ではホーチミンとタイではすでに拠点があるため、それぞれの国境までは既存ルートで運び、そこからプノンペンまでの低温輸送に新規事業として取り組みます。ベトナムとタイの顧客からプノンペンに運びたいとの要望もありました」と語る。従来の輸出入重視型の物流から、5年後、10年後を見据えた、低温輸送のカンボジア国内流通展開も視野に入れての新規事業参入と言えよう。

■ 期待される陸路輸送 Developments in overland transport

 陸路が重要輸送手段の一つとなっているのもカンボジアの特徴と言える。タイとベトナムという高人口な経済大国に挟まれた立地条件にあり、さらにチャイナプラスワンやタイプラスワンとしての進出も活発で、在タイ国内工場の第二工場をカンボジアに作り、タイから運んだ部品をカンボジアの安い賃金で組み立て、それをタイに戻して最終組み立てをして製品として輸出する動きも加速している。また、ベトナム国境近くにあるバベットの工業団地内で生産し、陸路2時間で行けるベトナムのホーチミンの港から輸出。ベトナムの工業団地とほぼ変わらない立地条件で、カンボジアの安い労働力を使い製造し、日本への輸送をする日系企業も増えてきている。鴻池運輸の高林氏は「カンボジア単体としてはいまだポテンシャルの段階で、他国と比べるとまだ市場は小さいのですが、各企業がベトナムやタイの隣国と組み合わせて物流を考えているというのが興味深いです。ASEAN経済統合も控え、南部経済回廊を活用した物流は今後も益々加速していくと予想しています」と語る。道路自体の拡張工事も進められており、整備が進めばさらなる時間短縮も期待される。

 2015年4月に日本のODAにより建設されたネアックルン橋(愛称「つばさ橋」)の開通式典が実施された。ホーチミン・プノンペン・バンコクを経てミャンマーのダウェイに至る南部経済回廊のボトルネックを解消するだけでなく、日カンボジア両国の協力と友好関係を示す橋梁と謳われる。開通前までは屋根無しの大型フェリーにて、乗用車や大型車両だけではなく、人や動物も一緒に移動するカンボジアらしい光景が見られたが、乗り込みに時間を要し、運行速度も非常に遅かった。繁忙期には待ち時間を含め渡河に数時間以上を要し、さらには夜間はフェリーの運航がないため、渡河が不可能であった。この橋梁の開通により渡河時間が5分程に短縮され、南部経済回廊を通じた物流や交通等も円滑になり、カンボジア国内のみならず、メコン地域全体の経済発展も期待される。

■ カンボジア特有のドライポート Specifics of Cambodian dry ports

 カンボジアのもう一つの大きな特徴としてドライポート※7 が挙げられる。「基本的にドライポートには、広大な土地、倉庫、税関機能があります。これはカンボジア特有のものだと思います。他の国であれば、どの土地にも倉庫を建てられますし、そこからの輸出が可能です。カンボジアではこの限りでなく、輸出をするためには二つの手段しかありません。一つ目は関税手続きを工場で行うこと、もうひとつはドライポートで行うことです。ヨーロッパなどで一般的にいわれるドライポートとカンボジアのドライポートでは考え方が違いますね。カンボジアにいる多くの方もこの勘違いをしていてます。カンボジアのドライポートは、輸出に関する一連の業務が可能な場所というような意味しかないんです。これがユニークなのは、 5、6社のドライポート管理会社にその独占権があるという点です。つまり、すべての工場は製品を輸出するためには、どこかのドライポート を使うしかないんです。もちろん管理会社にとってはいいですが、競合を育てるという面ではよくない点ですよね」とトーマスインターナショナルのトーマス氏は語る。工場側でドライポートを経由せずに直接輸出が手配できるような環境になる日も待たれる。

※7 ドライポート: 貨物の集配、通関業務、保管等を行う施設。税関機能も有している。プノンペン港はメコン河沿いの河川港で市街地に有るため、このようなヤードが工場エリア周辺に多数作られている。

(055 カンボジアの運輸・物流④へ続く)


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